レビュー

医療・介護問題は人材確保が

2008.10.24

 社会保障国民会議の「サービス保障分科会」が、「2025年度の医療・介護費用の財政試算」を発表した。妊娠中に脳内出血を起こした女性が、8つの病院で受け入れを拒否され、結局、死亡する事態が都心で発生したばかり。医療崩壊の恐れが、一般の国民にまで身近な問題として認識されるようになっている。社会保障国民会議分科会の試算を伝える各新聞の報道も手厚い。

 今回の報道では、費用の問題が前面に出ているものの、医療・看護に従事する人材の確保にも目配りした記事が多かったのが目に付く。

 「人材確保実現性に疑問」。東京新聞は、このような見出しのサイド記事を掲載し、「改革を実施すれば、医師や看護婦の奪い合いになり、地域によってはますます医療過誤が進む」と警戒する医師会関係者の声を紹介している。

 毎日新聞もサイド記事の中で次のように指摘している。「理念先行で産科医不足など目の前の課題をどう解消するかには答えていない。介護職員を今の2.2倍にするとも言う。だが、どう人を集めるのかを示さないと絵空事に終わりかねない」

 今回、示された試案は「3案すべてで医師や看護師など医療従事者の大幅増を前提に置いた。3案いずれの場合でも医師は現状より2割前後多い32-34万人に増え、看護職員は4-6割増の180万-206万人になるとの見通しを示している。介護については3案で介護施設、在宅介護とも、利用者が7割超増えると見込んでおり、介護職員も2倍強の250万-255万人に増えるとした」(日経新聞)。

 ところが各紙が指摘しているように介護職員は、低賃金をはじめ労働条件の悪さから今ですら確保が難しいのが実態。産経新聞の記事は「人手不足が深刻な介護職員が現状から2倍以上増えるとするなど、楽観的とも思われる設定もみられる」と指摘しており、日経の記事も「離職率を下げる効果的な政策をいかに打ち出せるかが大きな課題だ」と書いている。

 朝日新聞も「(255万人は)簡単ではないが、荒唐無稽でもない」という社会保障国民会議事務局の声を伝えるとともに「低賃金や労働条件の悪さで人材確保が困難な現状を見ると、待遇改善は必須とみられる」としている。

 医療・介護が、日本の将来にとってますます深刻な課題となっていることは多くの国民が感じていると思われるが、今回の試案で、人材確保に人々の関心が集まることを期待する医療・介護関係者は多いのではないだろうか。これを機に幅広い議論が巻き起こり、特に医療・介護関係者からもっと多くの発信が求められるのでは、と思われる。

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