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医師不足は明らかか

2008.07.07

 医療崩壊の心配については、当サイトでも先週と今週の2回続きで井村裕夫・先端医療振興財団理事長(元京都大学総長)のインタビュー記事「医療崩壊防ぐ抜本的対策を」を掲載した。国民医療推進協議会(日本医師会など医療関係を主に40団体加盟)は、社会保障費の年2,200億円削減撤廃を求める「地域医療崩壊阻止のための国民運動」を展開中だ。

 では、実態はどうか。日経新聞が6日朝刊で全国各地の中核的な病院を対象に実施した調査結果を伝えている。記事によると「回答した約550病院の約6割が2007年度までの4年間に『医師が確保できない』という理由で診療体制を縮小していたことが分かった」という。その後、復旧したのは9.7%にすぎず、大半は診療体制が縮小されたままだ。

 縮小された診療科は多い順に、内科(34.0%)、産婦人科(33.4%)、小児科(21.7%)、麻酔科(16.4%)、耳鼻科・耳鼻咽喉科(11.4%)、眼科(7.6%)、皮膚科(4.1%)である。産婦人科、小児科、麻酔科というのは激務やリスクの多さなどから医師のなり手が減っているといわれていた科で、調査結果はそうした現実を反映しているといえそうだ。

 これに対し、耳鼻科・耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科は医師の希望者が最近増えている科といわれていた科である。生死にかかわるような治療が少ないからとみられているが、こうした科までも縮小されている理由はなぜか。日経新聞の記事は「病院の激務を嫌い開業医に転向する医師が多いことが大きな要因とみられる」としている。内科については、産婦人科と並び医師確保が最も難しい科であることが調査結果から明らかになっており、これが縮小された科のトップになっている理由とみられる。

 勤務医の過酷な勤務実態そのものも、調査結果であらためて裏付けられている。当直明けで午後まで勤務を続ける、いわゆる「36時間勤務」を病院全体で禁止しているところは11.6%にとどまっているというのだ。昔から長時間労働が問題になっているマスメディア業界でも、特別な取材対象を抱えているといったごく一部の場合をのぞき、ほとんど仮眠もとれない36時間勤務が常態化していることはないのではないか。

 新聞報道などでも伝えられている救急医療現場の過酷な実態は、救急医療を担う490病院の71.6%が「3年前に比べ負担が重くなった」と回答していることから、あらためて裏付けられた。事態はさらに悪くなっているということだろう。

 医療現場の正常化は容易なことではない。日経新聞の調査結果から、あらためて感じた読者も多いのではないだろうか。

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