レビュー

編集だよりー 2007年9月27日編集だより

2007.09.27

小岩井忠道

 朝刊各紙が一斉に福田内閣の支持率調査結果を伝えている。早朝のラジオ生番組キャスターのうち、森本毅郎氏(TBSラジオ)は「各社50%台で」という言い方で、新聞ごとの数字の違いは特に問題視しなかったが、森永卓郎氏(ニッポン放送)は、「朝日だけがいつものように低い」という言葉を挟んでいた。

 各紙の記事を見ると、福田内閣の支持率は日経新聞59%、読売新聞58%、東京新聞(共同通信の調査結果)58%、毎日新聞57%だったのに対し、朝日新聞は53%(いずれも小数点以下は四捨五入)。ほかが似たり寄ったりの数字のため、朝日の数字が余計目立ったのかもしれない。統計学的に見れば、この程度の差は当然なのかもしれないから。

 気になったのは、森永氏の言うように、ある新聞だけがいつも他の同種調査より「自民党支持率が低く出る」ということがあるとすると、単なる誤差とは別の理由が考えられないだろうかということだ。マスコミの世論調査は、調査の主体をきちんと明言して質問項目に答えてもらっているはずである。どの社の調査かによって結果が違ってくる、ということはないのだろうか。例えば日ごろ日本人記者には素っ気ないことしか答えない政財界の要人が、外国のメディアにインタビューされると急に饒舌になる、というように。

 「この新聞の世論調査に対しては、保守的な答えは言いにくい」と、つい別の答えをしてしまう。別の新聞の調査だったら答えたはずのものとは違う。そんな人が20人に1人いただけでも、今回のような差は出てしまう計算になる。

 古い話で気が引けるが、日本新聞協会研究所が1991年に実施した新聞記事に関する調査がある。一番読まれているのは「テレビ欄・番組紹介」で、66.4%が「よく読む」と答えている。これは、多分、実態を反映した数字だと思う。いや、ひょっとすると低めに出ているかもしれない。実はほかの欄をほとんど読まないのに「テレビ欄・番組紹介」を一番に挙げる、あるいはそれだけしか挙げないと軽く見られるだろう。などと考え、適当にほかの記事を「よく読む」と答えた人がいる可能性があるからだ。

 「テレビ欄・番組紹介」に次いで読まれるニュースは、「社会記事」、「地域ニュース」、「スポーツ」、「国内政治」となっていた。続いて6位に「国際政治・海外ニュース」が入っている。これをよく読んでいる人が「43.8%」となっているのを見て、「この数字は実態を表していない」と、ほとんど確信に近い思いで数字を眺めたことを思い出す。「国際政治・海外ニュース」を「よく読む」人が、43.8%もいるなんて、到底信じられないではないか。

 要するに日本新聞協会研究所という名前を掲げて、どういう記事を読むかなどという調査をしたところで、せいぜい分かるのは傾向程度。テレビの視聴率調査などに比べてもさらに信頼度の低い結果しか出ないのでは、ということである。

 こんなことは統計数理の専門家なら「先刻承知」ということなのだろうか。

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