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最終責任はだれに?

掲載日:2007年8月20日

新潟県中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原子力発電所の被害の大わくが分かりつつあるのに伴い、各新聞が今後の見通しなども含めた特集記事を掲載し、事故の影響、教訓をまとめている。科学新聞に2回(17日、23日付)にわたって掲載されたインタビュー記事の中で、住田健二・大阪大学名誉教授が、興味深い指摘をしているのが目を引いた。

住田氏は、原子力工学の専門家として研究、教育の現場を知るだけでなく、原子力安全委員や原子力学会長を経験し、原子力安全規制のあり方についても十分な知識を持つ。

最も興味深いのは「議論を起こすのならば、現在の原子力安全規制での多重構造の弊害を考え直してみる機会ではないかと思われる」という指摘ではないだろうか。「日本では所管行政官庁(この場合、経済産業省原子力・保安院)と原子力安全委員会の二重構造に加えて、地方自治体の安全確認が加わってきており、内容的には同じことが担当者を変えて3回繰り返されていることが多い」。さらに問題は、「これがわが国だけのやり方であることを意識している人は少ない」ということだ。

今回、国際原子力機関(IAEA)の調査を日本政府が受け入れた。これも住田氏にしてみれば「私はとうとう『4重規制』の時代となるのかとつぶやきたくなった」ということでしかない。「日本の耐震技術の成果・対応の海外への早期提供の要請」と理解すれば、IAEAが調査団を日本に派遣したことは意味がある。他国の原子力発電の安全対策、特に地震対策を考える上で貴重な教訓がたくさんあるはずだからだ。しかし、「日本国内の規制関係は地元として信頼できないから、IAEAの調査の受け入れを地方自治体の首長が経済産業省の大臣に申し入れたら、一度は当面の受け入れを断ったものが、早くも実現した」というのでは、住田氏から見たら、これまで3回も同じようなことをしている上にさらに輪をかけるようなものでしかない、ということだろう。

ことは原子力だけでなく、何度も繰り返し問題になっている食品の安全などについても共通する話なのかもしれない。だれが安全の最終責任を持つのか、ということだ。何のかんの言いながら結局はお上の締め付け(規制)に頼るのか、安全の最終的な責任はそれを生活の基盤としている生産者に委ねない限り、根本的な解決策には成り得ない、と考えるかという。

「かつて、原子力安全規制に関与したことのある私の答えも、世界中の規制当局者同様に、最終責任は設置者のもので、監督官庁は最善のアドバイザー以上でも以下でもないと思っている」

住田氏のような考え方をする人は、実際には少なくないと思われるのだが、まともな議論にならないのはなぜだろう。(引用は23日付、科学新聞「新潟中越沖地震・原発地区の被災に思う」(下)から)

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