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原発設計の最大地震動とは?

2007.07.17

 16日発生した新潟県中越沖地震では、柏崎刈羽原子力発電所で設計時に想定した地震を上回る揺れ(加速度)が観測された。東京電力がいち早くデータを公表したことで、原発耐震のあり方があらためて問題視されている。

 東電は、柏崎刈羽原子力発電所1号機、5号機、6号機の原子炉建屋最下階でどのくらいの加速度が観測されたか、南北、東西、上下それぞれの方向について公表した。このうち設計値より観測値が下回ったのは5号機の上下方向のみ。観測値と設計値の差が一番大きかったのは1号機の東西方向で、設計値273ガルに対して、実際の観測値は680ガルに達した。(東京電力のプレスリリース参照)

 これが「揺れ680ガル想定2.5倍」(毎日新聞)、「揺れ『限界』の2.5倍」(産経新聞)、「基準2倍超す揺れ」(東京新聞)、「想定値大きく超す揺れ」(読売新聞)、「『原発直下型』想定超す揺れ」(日経新聞)、「揺れ設計時の想定外」(朝日新聞)など、各紙朝刊がそろって記事の見出しに取った根拠である。

 原発の設計に当たっては、「設計用最強地震」と「設計用限界地震」の2つを想定して、重要機器の安全確保を確認することになっている。「将来敷地に影響を与える活動度の高い活断層」が周辺にないか調べた結果を基に、最大の地震動を想定するのが「設計用最強地震」だ。

 一方、「設計用限界地震」とは、「活断層によるもの、日本列島およびその周辺海域の地震発生区域ごとの地震規模上限のもの、およびマグニチュード6.5の直下地震を考慮し、これらのうち最大のものを想定」したものだ。「設計用最強地震」に加え、念を入れてさらに大きな地震動も設計上、考慮している、ということだ。

 同原発の「設計用最強地震」は、「北東に約20キロ離れた内陸の気比ノ宮断層で発生するM6.9の地震を想定していた」(産経)。実際に原発に最大の震度をもたらす地震は、この断層で起こりうる地震、と見込んでいたということである。一方「設計用限界地震」としては、直下型、具体的には「原発の敷地から10キロ以内に震源を持つマグニチュード(M)6.5の地震」を想定していた。

 ところが、現実には事前に見落としていた断層、それも原発から約9キロしか離れていないところで、「設計用限界地震」を上回るM6.8の地震が起きた。

 今回の地震により、耐震基準の考え方があらためて大きな議論になることは必至とみられる。とりわけ「「設計用限界地震」として柏崎刈羽原子力発電所でも使われている「M6.5の直下地震」について、現行の地震規模、M6.5をどこまで引き上げるべきか、早急な検討が求められるのではないだろうか。

 「原子力安全委員会では昨年、原発の耐震設計指針を見直し、活断層を見落とした場合を考慮した直下型地震をM6.5から引き上げる指針を設けた。…ところが、…Mの値をいくらに設定するかは、『まだ具体的に決まっていない』(原子力安全・保安院)状況だ」(東京新聞)。(各新聞の引用は東京版から)

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