レビュー

ヤマダ電機の池袋進出と世界人口白書

2007.07.13

 家電量販店のヤマダ電機が13日、池袋駅前に大型店舗「LABI(ラビ)池袋」を開店した。これまで郊外にしか店舗を構えていなかった業界最大手が初めて都心部進出したとあって、13日のフジサンケイビジネスアイが1面トップで伝えたほか、各全国紙も朝刊の経済面でそれぞれ取り上げていた。

 各紙の記事によると、家電量販業界は「1位のヤマダと2位のエディオンは、これまで郊外型店舗を中心に展開。一方、ビックカメラやヨドバシカメラは都心部の駅前店舗が中心で、一定のすみ分けができていた」(毎日新聞)。今回のヤマダ電機の池袋駅前進出は「『郊外型』『駅前型』という業界の壁を突き崩す」(朝日新聞)もので、「少子高齢化で今後は大きな成長が見込めないため、人口が集中する大都市で駅前立地型のLABIを出店していく考え」(産経新聞)ということのようだ。

 同日早朝のTBSラジオ番組「森本毅郎スタンバイ」でもこのニュースは取り上げられていた。レギュラーコメンテーターの伊藤洋一氏(住信基礎研究所主席研究員)が、6月27日に国連人口基金が発表した「世界人口白書2007」を引き合いに、この動きを論じていたのが面白かった。

 「世界人口白書2007」は、2007年の地球の人口が66億人を超え、08年には世界の人口の約半数が都市に集中するだろう、と報告している。伊藤氏の分析は、ヤマダ電機の都心部進出も人口の都市集中という世界的な流れに合っている、というものだった。

 さて、その「世界人口白書2007」の内容はいかなるものか? ざっと目を通してみると、いろいろなことが書いてある。まず「都市拡大を阻止しようと無駄な努力をするよりも、都市拡大に対応し、その可能性に立脚した政策の選択肢を客観的に検討すべきである」とあるのに目を引かれた。「その可能性」とは何かといえば、都市集中の利点のことだ。白書は、次のように都市の優位点を挙げている。

 「経済競争はますますグローバル化している。グローバリゼーションがもたらすチャンスを生かし、多くの人々に仕事と所得を与えるという点で、都市には優位性がある」、「都市は、教育とヘルスケアを中心とするサービスや生活の便益を提供しやすい状況にある。それはひとえに都市のもつ規模と近接性という利点から来る」、「都市化は、増加する農村人口のはけ口となることで、環境悪化を食い止めるのに役立つ」などなど。

 そんなことはあらためて言われなくても、と感じる日本人は少なくないかもしれない。「環境悪化を食い止める」理由とされているのが「都市に出て行かなければ、農村で増えた人口は、自然の生息地と生物多様性のみられる地域を浸食するにちがいない」と言われては、「そう単純ではないだろう」と思う人も。

 しかし一方、東京一極集中は好ましいことではないと何となく思い込んでしまってはいないだろうか。その結果、的確な対策の実現を目指す前に、あきらめてしまっては…。白書を読んでそんな感想を抱いた人もいるかもしれない。

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