レビュー

国民の理解に力点置いた科学技術白書

2007.06.18

 政府が15日の閣議で決定した平成18年度科学技術に関する年次報告、いわゆる科学技術白書は、科学技術に対する国民の理解、具体的には科学技術への投資として「税金」を投入することに対して国民の理解を求めることに力点を置いた内容になっているのが、目を引いた。

 これまでの科学技術投資によって生まれた成果を、研究者へのインタビューや成果が生まれるまでの経緯、社会への貢献などを中心に、かみくだいて紹介しようとしていることがよく分かる。

 例えば、2003年2月に中国で問題になった重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスの国内侵入を防ぐため、吉倉廣・国立感染症研究所長らは科学技術振興調整費を使って、ウイルス検査法とウイルス性気道感染症の鑑別症を開発した。20分以内のウイルス検出を可能にした検査薬は、同年12月に全国の衛生研究所や検疫所に配布され、SARSの国内侵入を未然に防ぐのに役立った。

 上智大学アンコール遺跡国際調査団は、科学研究費補助金などを使って、カンボジア・アンコール遺跡内のバンテアイ・クデイ遺跡で274本の仏像と千体仏石柱を発掘し、アンコール王朝末期の歴史を塗り替えた。

 そのほか、カーボンナノチューブや青色発光ダイオード、垂直磁気記録型HDD、霊長類研究、素粒子物理学研究、脳科学など、多くの人が耳にしたことがある研究成果がどういう経緯から生まれ、どんな効果をもたらすかを分かりやすく紹介している。

ページトップへ