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電球は蛍光ランプへ 安倍首相夫妻が全面広告に

2007.06.05

 「電球から、日本を明るくしよう−みんなで止めよう温暖化」という全面広告が、環境の日の5日、各新聞の朝刊に掲載された。広告主は、政府の地球温暖化対策推進本部だ。

 安倍首相自ら居間の電灯を電球型蛍光ランプに付け替えているのを、ソファーに座った昭恵夫人が笑顔で見つめる。そんな写真に「温暖化問題の解決には『家庭』が大きな鍵。エコスタイルを見直し、『1日1人1kg』のCO2削減をめざしましょう。…」という安倍首相のあいさつが載っている。

 さらに「電球型蛍光ランプの寿命は、白熱電球の6倍」、「価格はやや割高ですが、電気代は約1/4以下で済みます」、「12W電球型蛍光ランプの明るさは、54Wの白熱電球と同じ、明るさをガマンしない省エネです」といった説明も。

 新聞の最も熱心な読者といえる早朝のラジオ生番組キャスター、コメンテーターたちが見逃すわけはない。ニッポン放送「朝はニッポン一番ノリ!」のキャスター、森永卓郎氏が早速、話題にとりあげ、TBSラジオ「森本卓郎スタンバイ」でも森本氏とコメンテーター、酒井綱一郎氏が、ひとしきりこの広告をめぐってやりとりしていた。

 日本は、1997年の気候変動に関する国際連合枠組条約・京都議定書で、CO2など温室効果ガスの排出量を、2012年までに6%減らすことを義務づけられた。6%というのは1990年の排出量を基準にしてということだが、現時点ですら排出量は1990年を上回っており、6%の削減目標の達成が困難なことは“常識”になっている。

 CO2排出量が経るどころか増えていることの原因の一つは、家庭から出る排出量が伸びているためとされている。ここに手を付けないと、温暖化対策も実効が期待できないという考えが、今日の前面広告の背景にあるということだろう。

 家庭生活の見直しが、大きな影響を持つということに関しては、ノーベル物理学賞受賞者でもあるスティーブン・チュー米ローレンス・バークリー国立研究所長も、指摘していた。昨年12月16日、日本学術会議が主催した「エネルギーと地球温暖化に関するシンポジウム」の基調講演の中でである。

 米国の家庭用電気冷蔵・冷凍庫がエネルギー効率の高いものに置き換わっただけで、国全体の電気使用量が相当減った、という。ついでに、チュー所長は、個人的な努力として次のようなエピソードを紹介し、参加者たちを笑わせていた。

 「蛍光ランプに変えたほうがよいと妻に言っても『白熱灯の光が好きだ』と聞かない。そこで私のしたことは、妻に隠れて、家中の白熱灯を蛍光ランプに変えてしまったことだ。妻は気付かなかった」

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