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部品調達で日本企業も社会的責任重視

掲載日:2007年3月12日

国内外の部品・原材料調達先に、環境への配慮や法令遵守を求める動きが、日本の大メーカーに顕著になっていることを、日経新聞が9日トップ記事で紹介している。

記事の中でこうした取り組みを始めた企業として、松下電器、富士ゼロックス、ソニー、花王、トヨタ自動車といった名前があがっている。松下は「2008年ごろをメドに、国内外の部品調達先9千社を対象に社会的責任の徹底を取引条件に定めた契約を交わす」という。

製品に責任を持つには、自社の基準を万全にしただけでは不十分。9千社もの部品・原材料調達社まで同じ基準を守ってもらわない限り、自社製品の責任は保てない。こうした時代になっている、ということだ。

「欧州連合(EU)では化学物質の使用規制が昨年から始動。調達先にもルールを徹底しなければ、製品メーカーが規制をやぶる結果になりかねない」という目先の要請もある。

EUの使用規制というのは、昨年7月1日施行の「ROHS(ローズ)指令」のことだ。EU市場に出される新しい電子電気製品には、鉛、水銀、カドミウム、6価クロム、ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテルが含まれてはならない、という厳しい規制である。この基準に合わない製品は、欧州市場からは締め出されてしまう。

日経新聞は、昨年7月4日朝刊企業総合面で、松下電器など日本企業30社が、ROHS(ローズ)指令などへの対応として「化学物質の情報管理方式を共通化する」動きを伝えていた。「化学物質の濃度などのほか、部材の加工時に性質が変化した後の化学物質の情報も把握できるようにする。情報は各社でデータベース化しネットを通じて検索できるようにする」というわけだ(2006年7月7日レビュー「日本企業も化学物質規制の国際的流れに対応」参照)。

9日朝刊の日経新聞記事は、国内大手企業の動きの根底に「企業の社会的責任(CSR)」が、最近強く言われるようになっている国際的流れがあることを、指摘している。

同紙によると、「CSR調達」というのは、「法令順守や環境保全、人権尊重、地域貢献、安全対策などの実行度を取引条件とする」こと。「欧米では1990年代から途上国の労働問題などを発端に、主要企業がCSR調達を拡大してきた」という。

ここで興味深いのは「株式市場ではCSR対応を投資基準にする『社会的責任投資(SRI)への関心が高まっており、米国での投資額は2兆ドル(約233兆円)を超える』という事実だ。

日本では、CSR調達の動きが、欧米諸国より遅れて始まったのと同様、社会的責任投資(SRI)、つまり環境への配慮や法令順守を経営に積極的に取り入れている企業への投資に対する関心が非常に低い実態がある。「日本の場合、たった2,000億円程度しかない」と、山本良一・東京大学生産技術研究所教授は、指摘している(1月23日インタビュー「マテリアルリスクにも国際的取り組みを」参照)。

地球環境に対する取り組みに関して、一般国民が政府や企業に“圧力”をかける動きが、日本の場合、欧米に比べ、弱い面がある。社会的責任投資(SRI)の額が、米国などに比べ極端に少ないのも、そうした表れの一つ、というのが山本教授の見方だ。

企業の社会的責任の度合いを評価した「環境経営格付」の取り組みがすでに始まっているが、こちらのほうに対する一般の関心も、もっと高まってしかるべきだろう。(日経新聞の引用は東京版から)

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