レビュー

年金通算措置と退職金前払い制度を提言

2007.01.04

 総合科学技術会議が、科学技術振興と成果の社会還元に向けた制度改革の報告書を、2006年12月25日にまとめた。

 全体で66項目という広範な改革提言となっているせいか、逆にメディアの報道は、簡単で目立たないものになった。

 ここでは、研究者の流動性を高めるために必要と提言されている制度改革に絞って紹介したい。

 報告書は長期雇用という日本社会の伝統が、研究環境の活性化を阻害しており、研究者全体のレベルアップにつながっていない現状を、指摘している。よりよい研究の場を求めて組織を移動する研究者に、経済的な不利益を被らせている制度が、年金と退職金。

 年金の場合は、公務員共済年金と私学共済年金の職域部分、企業年金といういわゆる「3階部分」に、加入期間を合算するという通算措置がなく、年金制度の異なる研究機関を移動した場合、不利益になっている。報告書は、2010年度までに見直されることが決まっている公務員共済年金と私学共済年金の新たな制度に合わせて、これら新たな年金制度と企業年金との間に年金通算措置を可能とするよう求めている。

 また、日本では多くの組織において、勤続30年程度を経過した時点で、退職金の額が大幅に引き上げられるのが普通。30〜40歳代で組織間を移動すると大きな不利益を被る。

 そこでごく一部の企業で導入されている「退職金前払い制度」を大学や研究機関、民間企業が、少なくとも新規採用者に選択肢として与えるとともに、可能な限り新規採用以外の研究者にも広げ、退職金前払い分に相当する額を給与に上乗せして受け取れることができるような措置を導入することを求めている。

 この退職金前払い制度に加え、業績評価と連動した年俸制導入の必要性もうたっている。

 報告書によると、大学教授が生涯に組織を移動する回数は、諸外国では1.5〜3.5回なのに対し、日本は0.7回(1993年、カーネギ調査)。科学技術政策研究所が、2004年に実施した調査でも0.99回にとどまっている。

 なお、退職金前払い制度は、すでに理化学研究所と松下電器産業で導入済みで、いずれも定着している。

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