レビュー

シンポジウムの国際化は進んだかもしれないが

2006.12.07

 たこつぼ型に陥っている現代医科学を再統合し、それを持続するための教育システムも作り直そうという「国際統合医科学研究・人材育成拠点の創成」プログラム(インタビュー参照)の国際シンポジウムが、3-5日、東京女子医科大学で開かれた。

 このプログラムは、文部科学省の「戦略的研究拠点育成プログラム」として、昨年度からスタートしている。通称スーパーCOE(センター・オブ・エクセランス)と呼ばれる、これまで全国で13しかないプログラムの一つだ。COEがあまりにたくさんできてしまい、それと区別するために「スーパー」が頭についたと思われるが、当然、投入される研究費の額は大きい。

 推進組織は、日本女子医科大学が核となってつくられた「国際統合医科学インスティテュート」である。5年間という期限付きのプログラムだから、その間に明確な成果を出すことが求められている。

 4日午後のシンポジウムのテーマは「疾患の新規診断法と治療法」だった。まず、7人の研究者がそれぞれ報告した。4人が外国人、3人が日本人だった。すべて英語である。

 印象に残ったのは、1時間余りをとった会場の参加者との質疑の時間だ。まず、最初に質問に立ったのは、米マウントサイナイ医科大学の教授。複数の演者に相当しつこい(と思われる)質問を何度も浴びせかけた。

 質問者のためのマイクは、客席の間の通路に設置されていたが、教授の質問の途中から、複数あるマイクの後ろには、質問を待つ参加者が並び出した。

 結局、次々に質問に立ったのは全部で8人。半分以上は外国人研究者だった。外国からの招待者は費用が主催者持ちということだから、シンポジウムを盛り上げてやろうという気持ちがあったかもしれない。しかし、そうだとしても、こういう光景は新鮮だ。

 さて、話がこれで終われば、日本の学界の国際化もなかなかのところに来た、めでたしめでたしとなるのだろうが、このセクション終了後、質問者の1人だった日本人研究者に聞いた話を付け加えたい。

 「(質問が相次ぐというのは)欧米では当たり前の光景。むしろ、質問の機会はできるだけ若手に与えようと努めるのが、司会者の役割のようになっている。だから、きょう質問できた(名のある)海外の研究者たちは喜んでいるのでは。いつもは若手に譲っているだろうから。そういう意味で言うと、きょう質問した日本人に若手がいないのが問題。日本は若手の研究者、特に30代の層が薄くなっていることを示している。最近まで、ある医大で教えていたが、高校(で習わなければならない)の教科を教えていた。大学受験のための勉強しかしていないからだ」

 これでは、年配の研究者たちが心配になるのは当然かもしれない。

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