レビュー

長周期地震動で超高層ビルの安全性はどうなる

2006.11.22

 11月20日付の毎日新聞夕刊1面にかなりショッキングな記事が載っていた。巨大地震で発生する「長周期地震動」によって、名古屋市や大阪市では超高層ビルが大きく損傷する可能性があることが土木学会と日本建築学会による合同研究会で分かった、というもの。

 長周期地震動は周期が2-10秒ほどのゆっくりした揺れ。新潟県中部地震(2004年)のような、いわゆる直下型地震ではあまり問題とはならず、プレートとプレートがぶつかり合う海溝型巨大地震で発生する。

 2003年9月の十勝沖地震がそのタイプで、北海道苫小牧市の製油タンク内の石油がこの長周期地震動に共振して大きく揺れ、タンクが損傷し火災となった。超高層ビルや長い吊り橋など巨大な構造物もこの長周期の揺れと共振して大きく揺れる可能性がある。

 この長周期地震動については、十勝沖地震以後、危険性が指摘され報道もされてきた。今回の2学会合同の研究会はこうした動きを受けて共同宣言としてまとめたもので、耐震性に問題のある建築は地震エネルギーを吸収する装置の設置や補強工事の必要性を訴えている。

 翌21日付の読売新聞朝刊にもこの提言についての記事が載っているが僅か2段の短い記事。

 日本では高層ビルが林立する大都市が巨大海溝型地震に見舞われたことは一度もない。あらゆる対策をたてるべきだという両学会の警鐘はもっと大きく報道されるべきではないのか?既存の超高層マンションは大丈夫なのかどうか、もっと詳しく知りたい人はいっぱいいるだろう。見方によっては、この長周期地震動の問題は耐震偽装問題よりも影響が大きいのではなかろうか?

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