レビュー

科学とニセ科学

2006.09.25

 朝日新聞9月20日夕刊「かがく批評室」欄で菊池誠・大阪大教授が「ニセ科学」について論じている。

 いわゆる「疑似科学」についての論考だが、菊池教授が例として挙げているのは「血液型性格判断」や「マイナスイオン」、ちょっと手がこんでいる「水に"ありがとう"と声をかけると雪の結晶に似たきれいな結晶ができ」る話など。

 菊池教授は「この手のニセ科学が今に始まったわけではないが、最近の状況は以前よりはるかに深刻に思える」と憂えている。

 確かにその通りで、民放テレビの番組にはこの種の話題があふれている。教祖がヘッドギアをつけて「疑似科学」で理論武装した某教団のことなど忘れてしまったかのような無責任ぶりである。

 さらに状況を悪くしているのはインターネットだ。自然科学ブログ人気ランキングに、一読しておかしなブログが堂々と登場していたりするから始末が悪い。

 いくら「ニセ科学」が蔓延しても、一般市民がそれを見分けられれば問題は少ないが、事態は複雑だ。菊池教授は「昨今、先端科学の成果を一般市民に"わかりやすく"伝えることが強く求められている。ところが、そこには落とし穴が待ち受けている」と指摘する。

 なぜなら「科学を"わかりやすく"語ることに慣れていない科学者たちは、先端科学の成果がいかに不思議であるかを強調すれば"わかりやすい"のだろうと安易に考えがち」だからだという。

 菊池教授の結論は「"こんなことが起こります"という結果だけでなく、その裏にある科学の"考え方"を伝える努力が求められている」

 理想的にいえば「科学の考え方」を「わかりやすく」伝えられればいいのだろうが、こんな難しいことはない。

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