レビュー

研究費不正受給問題の余波続く

2006.07.14

 早稲田大学教授の研究費不正受給問題は、今年度に新規採択された科学技術振興調整費の執行凍結、文部科学省による再点検という事態に発展している。

 アルバイト代として架空請求し、還流させる。特別の関係がある企業との間で架空取引を行い、いったん企業に支払われた金を寄付講座開設という形で、還流させる−。伝えられる不正受給のあらましである。

 企業による寄付講座は素直に考えれば、恩恵を受けるのは大学である。教授個人だけの問題とは、やはり片付けられないようだ。

 7月7日の科学新聞が、この問題が明るみに出る前の4月3日と5月17日に大学内部、外部あてに出された内部告発の中身を詳しく伝えている。

 「告発文には、研究室で管理している松本教授名義の通帳のコピー、研究室支出一覧のコピー、2年前に理工学部内で調査が行われ作成されたバイオメディカルエンジニアリング社(B社)との架空取引についての文書が同封され、(1)学生やポスドクのアルバイト料を本人に支払った後、そのまま松本教授名義の口座に振り込ませていたこと、(2)2年前のB社との問題、(3)研究論文にデータのねつ造があること−が指摘されている」

 内部告発者本人あるいは告発者に協力した人間が、教授の研究グループに極めて近いところにいる(いた)ことを十分うかがわせる内容といえそうだ。

 以下は新聞の引用ではないが、10数年前、東京大工学部に寄付講座が設けられたことがある。当時は、珍しいことだった。非鉄金属会社から寄附講座の教授に就任した人物が、当時、こんなことを言っていた。

 「国立大学の事務職員には、自分の大学の先生にいい研究をしてほしいから一生懸命支援しようという気持ちはない。研究成果が上がろうが上がるまいが自分たちの待遇に何の変わりもないのだから。企業と違って、国立大の教授は、経理処理も自分でやらなければならない。将来、研究費の使い方で問題を起こす人間が出てくる恐れは十分ある」

 大学を取り巻く環境はこの10数年で大きく変わっている。国立大も国立大学法人になった。しかし、人の意識まで簡単に変わるとは考えにくい。

 読売新聞は11日の朝刊社会面トップで次のように報じた。

 「太陽観測の権威として知られる国立天文台(東京都三鷹市)の男性教授(51)が、1998年から4年間に文部科学省から受けた科学研究費補助金(科研費)のうち、研究を手伝う大学院生に支払う『謝金』と報告していた計185万円を不正流用していたことが10日、わかった」(読売新聞の引用は東京版から)

ページトップへ