レビュー

温暖化論争と予防原則

2006.05.29

 米国のベストセラー作家、マイクル・クライトンの最新作「恐怖の存在」(State of Fear)の影響もあってか、大気中の二酸化炭素などによる地球温暖化の危険性に疑問を呈する主張が目につく。(「やっぱり『地球温暖化』論は眉唾物」(薬師院仁志・帝塚山学院大助教授=「諸君」6月号など)。産経新聞5月22日「正論」で池内了・総合研究大学院大学教授が、この論争のポイントを分かりやすく解説している。

 「二酸化炭素が増えた(原因)から温暖化が生じた(結果)」という因果関係があるかどうかについて「明白な証拠はない」と懐疑派の主張に一定の理解を示す一方、「地球温暖化と二酸化炭素量の増加の相関関係を因果関係としてとらえる方が状況証拠をうまく説明できるのである」と。

 結論としては「私たちが取りうる最善の方向は『予防原則』である。科学的に証明されてはいないが、環境を害する恐れがあったり、人間の健康や福利に悪影響を与える可能性が指摘されるものについては、予防的な措置を優先する原則のことである」と、地球温暖化対策を急ぐべきだという主張の正しさを認めている。

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