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人類最後の日まで過去最短の「2分」 伝統ある米誌が「新たな異常事態」と警鐘

2019.01.28

 人類最後の日までの残り時間を概念的に示すことで世界的に知られる「終末時計」の時刻は「終末」まで「残り2分」と、米誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」が日本時間25日発表した。時計針の位置は「終末」まで過去最短だった昨年と同じで、気候変動対策の遅れや核戦争の脅威に対する強い懸念を表明した。世界の状況はこの一年で変わっていないことを物語っている。

 昨年の時刻は、冷戦中で水爆開発が過熱していた1953年と同じ「残り2分」だった 。同誌は今回、(1)地球温暖化は人類にとって脅威であるにもかかわらず世界の二酸化炭素(CO2)排出量が増加している(2)北朝鮮と米国両政府の対話の動きはみられるものの核問題自体は未解決で、米国など核保有国では核兵器の近代化が進められている—などと指摘した。そして「世界は新たな異常事態の中にある」と警鐘を鳴らしながら「脅威に立ち向かうためにはまず脅威を認識する必要がある」「新しいグローバルガバナンスの構築が不可欠」などと強調している。

 米誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」は、原爆を開発した「マンハッタン計画」に参加した米シカゴ大学の研究者らにより1945年に創刊された伝統ある科学誌。「終末時計」は、人類が滅亡する人類最後の日を午前零時とし、同誌の表紙に概念的に示す形で第二次世界大戦2年後の47年から不定期に発表されてきた。時刻の決定はノーベル賞受賞学者を含む15人の科学者で構成される委員会で決まる。

 1947年の初回は「残り7分」で、米国と当時のソ連が相次いで核実験を実施あるいは計画していた1953年に最短の「残り2分」となった。ソ連が崩壊して冷戦時代が終わったとされた91年には「残り17分」まで戻った。「終末時計」自体は概念的なものだが、米イリノイ州のシカゴ大学にオブジェがある。

 日本ではこの「終末時計」をヒントに旭硝子財団が「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」結果を基に危機感を示す「環境危機時計」を1992年から公表している。

今年の「終末時計」を発表する関係者(提供・米誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」)
今年の「終末時計」を発表する関係者(提供・米誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」)
「残り2分」のイメージ画像
「残り2分」のイメージ画像

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