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長期埋め込み可能な人工硝子体を開発 東大、筑波大

2017.03.15

 眼球の中を満たす硝子体(しょうしたい)の代替ができる長期埋め込み可能な人工硝子体を開発したと東京大学と筑波大学の研究グループがこのほど発表した。網膜はく離など目の病気の手術に応用でき、患者の負担を軽減できるという。研究成果は英科学誌に掲載された。

 硝子体は、目に入る光の情報を脳へ伝える網膜と接し、ゼリーのようなハイドロゲル状の組織。多くの水を含んでいる。網膜はく離など網膜が関係する多くの目の病気の手術では硝子体の代替材料が必要だが、シリコンオイルなどこれまでの材料は生体適合性が低く長期間使えない上、術後に除去が必要だった。さらに患者は1週間程度入院してうつ伏せ姿勢を維持しなくてならず、術後管理の負担も大きかった。

 東京大学大学院工学研究科バイオエンジニアリング専攻の酒井崇匡(さかい たかまさ)准教授、筑波大学医学医療系眼科の岡本史樹(おかもと ふみき)講師らは、新しい分子設計技術を駆使して、含水率の高い新しいタイプのハイドロゲル状組織を作製することに成功した。さらにこのハイドロゲル状組織を人工硝子体にして網膜はく離のうさぎの目に注入する実験を実施した。その結果、1年以上長期間使用でき副作用もないことなどを確認した。この人工硝子体は自然に分解されて体外に排出されるため術後の除去手術も不要という。

 研究グループは網膜の病気の日帰り治療も将来できるようになると期待している。今回の研究は科学技術振興機構(JST)の課題達成型基礎研究(さきがけ)の一環として行われた。

写真 ウサギの実験で人工硝子体を使った治療の1年後の眼底写真(上)と網膜組織(下)。いずれもほぼ正常な状態が保たれていた(東京大学・筑波大学の研究グループ提供)
写真 ウサギの実験で人工硝子体を使った治療の1年後の眼底写真(上)と網膜組織(下)。いずれもほぼ正常な状態が保たれていた(東京大学・筑波大学の研究グループ提供)

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