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脳内の「やる気のスイッチ」を発見

2017.02.06

 脳の損傷などにより意欲が極度に低下する「意欲障害」を起こす脳の部位をマウスの実験で特定した、と生理学研究所と慶應義塾大学などの共同研究グループが発表した。研究グループはこの部位を「やる気のスイッチ」と呼び、治療法の開発に貢献できるとしている。研究成果はこのほど総合科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。

 意欲障害は、認知症などの神経変性疾患や脳血管障害、脳外傷など、脳の障害に伴って多く見られる意欲、つまり「やる気」が極度に低下する症状。障害が起きるメカニズムが不明だったために治療薬もなかった。

 生理学研究所の佐野裕美(さの ひろみ)助教と慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室、同生理学教室、北海道大学大学院医学研究科、防衛医科大学校の共同研究グループは、「大脳基底核」と呼ばれる脳領域の神経細胞集団(D2-MSN)が意欲障害に関係しているのではないかと考え、D2-MSNを除去できる遺伝子改変マウスを作成した。この遺伝子改変マウスと正常なマウスにそれぞれ、えさをもらうためにレバーを何度も押さなければならない行動実験を繰り返し行った。遺伝子改変マウスはD2-MSNだけに毒が作用してこの細胞を死滅する仕組みになっていた。

 この実験の結果などにより、D2-MSNが障害を受けたマウスは意欲障害を起こすことが確認できたという。研究グループによると、「やる気」を生むにはD2-MSN以外にもいくつかの部位が関係しているとしながらも、「やる気」を維持する脳部位を初めて特定できた、としている。

図 (生理学研究所と慶應義塾大学などの共同研究グループ作成・提供)
図 (生理学研究所と慶應義塾大学などの共同研究グループ作成・提供)

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