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毎日1箱1年の喫煙で肺に150の遺伝子変異 がん化リスクを確認

掲載日:2016年11月10日

たばこを1日1箱1年間吸い続けると肺の細胞では150個もの遺伝子の突然変異が生じる、と国立がん研究センターなどの国際研究グループがこのほど米科学誌サイエンスに発表した。遺伝子の変異はがん化のリスクを高めるとされる。今回喫煙がさまざまな部位の細胞の遺伝子に悪影響を与えることを初めて詳細に解析した研究成果として注目される。

国立がん研究センター研究所がんゲノミクス研究分野の柴田龍弘(しばた たつひろ)分野長のほか、理化学研究所や米国ロスアラモス研究所、英国サンガー研究所の研究員らによる国際研究グループは、日本を含むアジアや欧米の5,200人以上のがん患者の症例について、がん細胞のゲノム(全遺伝情報)を解読して遺伝子の突然変異と喫煙歴などとの因果関係を詳細に調べた。調査対象のがんは17種類に及んだ。

その結果、患者の喫煙とがん細胞の遺伝子の突然変異の間にはっきりした相関関係があることが判明。1日1箱のたばこを吸い続けた影響をみると、肺は150個、のどの下方にある喉頭(こうとう)は97個、上方の咽頭(いんとう)は39個、また口腔(こうくう)は23個、ぼうこうは18個、肝臓は6個の遺伝子変異が1年間に発生し、これが年々蓄積すると推計できたという。

突然変異の生じ方は部位によって異なり、肺や喉頭、肝臓などは、たばこに含まれる発がん物質により変異が起きていたが、ぼうこうや腎臓では発がん物質とは直接の関係なく変異が起きていた。この点について研究グループは、ぼうこうや腎臓では、喫煙が細胞の分子機構に影響を与えて間接的に突然変異を誘発しているとみてさらに詳しく研究する。一方、子宮頸や膵臓のがんについては喫煙と突然変異の関係は確認できなかったという。

研究グループによると、たばこに含まれる発がん物質は約60種類あり、喫煙者ががんで死亡するリスクは非喫煙者と比べて男性では2倍、女性では1.6倍高く、男性の場合喫煙者が肺や、喉頭、尿路のがんになるリスクは非喫煙男性の5倍も高いという。今回の研究結果について同グループは「喫煙が遺伝子の突然変異を誘発していたことが再確認された」としてがん予防のための禁煙の重要性を強調している。

表 (国立がん研究センターなど研究グループ作成・提供。表上の説明文は研究グループによる)
表 (国立がん研究センターなど研究グループ作成・提供。表上の説明文は研究グループによる)
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