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アルファ線でがん細胞を狙い撃ち 量研機構が新薬剤開発

掲載日:2016年6月16日

放射線の中でもがん周囲の正常細胞への影響が少ないアルファ線を使い、体内のがん細胞を狙い撃ちできる新しいタイプの薬剤を量子科学技術研究開発機構(量研機構、QST)が開発した。マウスの実験でがんの大きさが半分になることを確認したという。研究成果は米国核医学会で日本時間15日発表された。研究グループは臨床応用を目指している。

量研機構高崎量子応用研究所の石岡典子(いしおか のりこ)上席研究員らは、同研究所内にある加速器などを使用し、放射線の一つのアルファ線を放出しヨウ素と似た化学特性を示す元素「アスタチン211」を効率的に製造することに成功した。さらに今回治療研究対象にした褐色細胞腫の周囲に集積する性質がある物質にこの元素を組み込んで新薬剤「アスタチン211-MABG」(211At-MABG)を開発した。

研究グループによると、褐色細胞腫は、副腎に発生し国内で年間約3千人が発症するまれながん。大部分は良性で、外科手術により治るが、約1割は悪性で全身に転移する「難治がん」。これまでベータ線を放出するヨウ素131を使った治療法が行われていたが、十分な治療効果は得られなかった。

研究グループが、褐色細胞腫を移植したマウスに新薬剤を1回投与したところ、大きさは7日後までに半分に縮小し、がんの増殖を約20日間抑制できた。また副作用の指標である体重減少もなかった、という。

研究グループは、患者数の少ないがんの新薬開発は製薬会社がなかなか着手しないため公的研究機関の使命、としている。 量研機構は、放射線医学総合研究所(放医研)と日本原子力研究開発機構(原子力機構)の4研究所が統合して4月1日に発足した。統合は、量子科学技術に関する研究開発と放射線の人体への影響、被ばく医療や放射線の医学的利用に関する研究を総合的に進めることを目的とし、この中でもアルファ線を使ったがんの治療法や認知症診断法などの研究開発を加速していた。

図と写真 新薬剤「アスタチン211-MABG」(211At-MABG)をマウスに投与した結果。左の図はがんの増殖抑制効果を示すグラフ。右の写真は生理食塩水を投与したマウス(左)と比べて新薬剤 投与マウス(右)はがん(腫瘍)が小さくなっている (量子科学技術研究開発機構研究グループ提供)
図と写真 新薬剤「アスタチン211-MABG」(211At-MABG)をマウスに投与した結果。左の図はがんの増殖抑制効果を示すグラフ。右の写真は生理食塩水を投与したマウス(左)と比べて新薬剤 投与マウス(右)はがん(腫瘍)が小さくなっている (量子科学技術研究開発機構研究グループ提供)
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