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G7伊勢志摩サミットでバーミヤン東大仏天井壁画のクローン文化財展示

2016.05.27

 5月26日、27日の2日間、賢島(三重県志摩市)で開催されたG7伊勢志摩サミットで、2001年にタリバン政権によって破壊されたアフガニスタンのバーミヤン東大仏天井壁画の復元(クローン文化財)が披露された。この作品「天翔る太陽神」は、サミット会場の志摩観光ホテル内に「テロと文化財」として展示され、26日夜、各国首脳がこの壁画を視察、鑑賞しながら平和と文化財保護のための一層の協力を語り合った。

 制作を行ったのは、宮廻正明(みやさこ まさあき)東京藝術大学大学院美術研究科教授を研究リーダーとする東京藝術大学COI 拠点「『感動』を創造する芸術と科学技術による共感覚イノベーション」のプロジェクトチーム(プロジェクトリーダー:田村誠一〈たむら せいいち〉JVCケンウッド取締役兼執行役員最高戦略責任者)。COI(センター・オブ・イノベーション)プログラムは、文部科学省と科学技術振興機構(JST)が主導する産学官の連携プロジェクトである。

 まるで“同素材で、同質感”のクローン文化財は、オリジナル作品への深い調査と理解、最新のデジタル技術の融合によって生み出された。同大学が1970年代より蓄積してきたバーミヤン遺跡の現地調査資料や3次元計測データを基に、2次元および3次元の最先端のデジタル画像処理と印刷技術で質感と精度を高め、さらに、芸術家が培った模写の伝統技法と感性を注ぎ込むことで剥落箇所の図像を復元した。

写真 バーミヤン東大仏天井壁画「天翔る太陽神」破壊前復元 2016年制作(展示されたクローン文化財)
写真 バーミヤン東大仏天井壁画「天翔る太陽神」破壊前復元 2016年制作
(展示されたクローン文化財)
写真 復元のための彩色風景
写真 復元のための彩色風景

 なおこの作品は、東京藝術大学構内の美術館陳列館で6月19日(日)まで開催の「アフガニスタン特別企画展『素心 バーミヤン大仏天井壁画』 −流出文化財とともに−」でも紹介されている。東京国立博物館で同時開催の「特別展『黄金のアフガニスタン』−守りぬかれたシルクロードの秘宝−」と共に、展示作品はアフガニスタン内戦の混乱下で海外に流出して日本で保護された文化財だ。それら作品群は、2001年にバーミヤン大仏と壁画が破壊された直後から、国際社会に向けて保護と保管を訴えた故平山郁夫(ひらやま いくお)元東京藝術大学学長の呼びかけで収集・修復されたもので、この展示を機に、「母国返還式」が執り行われるという。

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