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湖沼の水生植物相変遷データを公開

2014.04.30

 全国の268の湖沼について、過去100年以上にわたる水生植物相の変遷を示すデータベースを、東邦大学理学部生命圏環境科学科の西廣淳(にしひろ じゅん)准教授らの研究チームが作成した。生態系の状態を知る基礎的な情報で、環境保全の調査や政策に活用できそうだ。国立環境研究所の高村典子センター長、小川みふゆ博士、東京農工大学の赤坂宗光講師との共同研究で、データベースを日本生態学会英文誌「Ecological Research」のデータペーパー(オンライン版)として4月に公表した。

 湖沼ごとに、水草などの水生植物の分布データを200以上の文献資料から収集した。日本の湖沼で、近代化とともに水生植物がどのように変遷したかを捉えることができる。水生植物は生態系の基盤として重要で、そのリストは、生態系を知る最も基本的なデータとなる。例えば、関東地方の湖沼では、水質の悪化などにつれて、水生植物が戦後、減少の一途をたどっている現状が把握できる。

 このデータベースは、文献だけでなく、市民団体や高校生物部の調査報告書など、各地に埋もれていたデータも、信頼性を確認したうえで、学術論文などと比較、検討できるような形で収録している。草の根からの市民データも取り入れることで、情報の精度を上げた。

 西廣淳さんは「湖沼の水生植物の報告は昔からあったが、ばらばらに散逸していた。それらを統合することで、さまざまな解析に活用できるデータベースができた。研究者の論文や市民調査報告など、多様な情報源を活用している。国際的なニーズに答えるため、まずは英文の論文として発表したが、地域の保全活動などを支援できるよう、解析結果を加え、日本語でも発表していく予定である。生物多様性のモニタリングのため、今後も更新し、充実させていく。古い調査報告書や新しい調査結果も随時受け付けて、反映させていきたい」と話している。

関東平野の主要な湖沼(印旛沼、手賀沼、霞ヶ浦)における水生植物種数の変遷
関東平野の主要な湖沼(印旛沼、手賀沼、霞ヶ浦)における水生植物種数の変遷.Nishihiro ほか(Ecological Research 印刷中)から改図

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