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アジアの科学は急成長、中国が日本を急追

2014.03.31

 アジア・太平洋地域の科学活動は各国政府の科学振興策もあって急成長しており、なかでも中国が日本を急追し、2、3年後には上回るペースにある。英科学誌ネイチャーは3月27日号の付録として出したNature Publishing Index 2013 Asia-Pacific 特集号で、こう指摘した。ネイチャーと30以上ある関連誌に2013年の1年間、掲載された論文などを研究機関や国別に集計してネイチャー出版索引(NPI)のデータとして示した。各大学や研究機関の広告満載の特集号で、ネイチャーと関連誌への論文に限ったデータだが、それらの限界を差し引いても、アジアや日本の科学技術の動向を知るひとつの手がかりにはなる。

 同特集号によると、ネイチャーとその関連誌への論文で、アジア・太平洋地域の研究者が貢献した数は12年に比べて36%も増加し、グローバルなシェアは28%から31%に上がった。09年から13年まで5年間、日本、中国、オーストラリア、韓国、シンガポールの順位は変わらなかったが、外国の研究者との共著も含めると、13年に中国は日本の研究者の論文を初めて上回った。また、多数の研究機関や大学を傘下に置く中国科学院が13年に、初めて東京大学を抜いてアジアのトップに立った。中国の研究者の論文数の伸びは日本より著しい。2、3年後には全体の総数でも日本を追い越して、アジアのトップになるだろう。国民総生産(GNP)に続いて、科学活動の量でも中国が飛び抜けるのは時間の問題といえる。もっとも、中国はコア技術の多くを外国に依存しており、研究者当たりの論文数も低い。

 論文の質で日本はまだ優れている。日本の研究者は13年にネイチャー本誌に73編の論文を執筆した。強い科学的遺産があり、科学分野のノーベル賞受賞者は、中国と韓国がまだゼロなのに対して、日本は16人輩出している。物理学、ライフサイエンス、地球・環境科学で日本はアジアで最も多くの成果を報告している。しかし、成熟している半面、若者の関与が弱く、13年の日本のNPIの成長率は24%とアジア・太平洋の上位5カ国で最も低かった。

 NPIの13年の世界ランキングでは、米ハーバード大、MITが1、2位で、中国科学院が前年の14位から6位に上がった。東京大学が8位、京都大学が27位、理化学研究所が31位だった。国内のランキングでは、東京大学、京都大学、理化学研究所、東北大学、大阪大学、名古屋大学、北海道大学、物質・材料研究機構、慶応大学、自然科学研究機構の順で、ほぼ前年と同じだった。

ネイチャー出版索引(NPI)に占めるアジア・太平洋の研究者のシェア推移
グラフ1. ネイチャー出版索引(NPI)に占めるアジア・太平洋の研究者のシェア推移
各国の研究者が著者になった論文数、2009年と13年の比較(いずれもNature Publishing Index 2013 Asia-Pacific 特集号から引用)
グラフ2. 各国の研究者が著者になった論文数、2009年と13年の比較(いずれもNature Publishing Index 2013 Asia-Pacific 特集号から引用)

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