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「流し目は駄目よ」の理由を発見

2014.03.24

 流し目(横目)のひそかな視線がつい気になるが、人は通常、こうした横目で見ることを避けるものだ。「横目による観察では視覚的な物の認識がうまくできなくなるため」という理由を、東北大学電気通信研究所の中島亮一(なかしま りょういち)産学官連携研究員と塩入諭(しおいり さとし)教授が確かめた。視覚には目だけでなく、頭が向く方向も重要であることを裏付けた。逆に、人の頭の方向を計測すれば、その人がどこに意識を向けているかを推定できることを示した。3月19日の米オンライン科学誌プロスワンに発表した。

 人は、あちこちに視線を動かして対象を見ている。かなり広い範囲を見ることができるのに、頭の正面から角度で30度を超える範囲では、目だけでなく、頭や体をそちらに向ける。この現象は前から知られていた。研究グループは、人が横目で観察するのを好まない理由を探るため、視覚情報処理という観点から研究した。

 あらかじめ指定された標的を探す視覚探索という心理学でよく使う実験を16人に実施した。頭と体を正面に向けた従来の心理実験の条件と、頭と体を画面とは異なる方向に向けて横目で画像を観察する条件で実験して、標的を見つけるまでの時間を比較した。この時間が長いほど成績が悪いと判定できる。実験で、横目観察の時には、探索時間が平均0.01~0.04秒(2~5%)長くなっていた。研究グループは各種の実験を工夫して「横目観察は、視覚的注意が関与する処理を妨げるように作用する。横目観察による妨害を小さくするため、人は頭を対象の方に向けていることがわかった」と結論づけた。

 中島研究員らは「物を見るときは、これまで見逃されがちだった頭の方向という要因をもっと重視すべきだろう。例えば、怪しい人物がどこに注意を向けているかの推定に、頭の方向という情報が利用できる可能性がある。眼球の動きを追跡するよりずっと簡単だ。認知心理学などにも刺激を与える発見だ」と指摘している。

頭の方向と視線。真ん中が真正面から観察、左右が横目観察
図1. 頭の方向と視線。真ん中が真正面から観察、左右が横目観察
視覚探索実験で、正面から見た方が横目の観察よりも、早く標的を見つけることを示したグラフ
図2. 視覚探索実験で、正面から見た方が横目の観察よりも、早く標的を見つけることを示したグラフ

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