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ジャワ原人が“フローレス原人”に進化した !?

2013.04.18

 1万数千年前までインドネシアに住んでいた、頭がグレープフルーツ大しかない小柄な人類「フローレス原人」は、大柄な初期のジャワ原人が孤島に渡り独自に進化した可能性が高いことを、国立科学博物館の海部陽介・研究主幹と河野礼子・研究主幹、東京大学大学院の久保大輔・特任研究員らの研究グループが「英王立協会紀要(Proceedings B)」(オンライン版)に発表した。

 「フローレス原人」(ホモ・フローレシエンシス)は2003年8月、インドネシア東部のフローレス島にある洞窟でオーストラリアと地元インドネシアの合同チームが発見した。数体分の骨格と石器、火を使った跡などが見つかった。原人の身長は1メートルほどと小柄で、脳もチンパンジー並みに小さい。そのため「どのような先祖から進化したのか」「島の環境が進化にどう影響したのか」「いつ、なぜ絶滅したのか」などと疑問の多い“謎の原人”とされていた。

 研究グループは、フローレス原人の頭骨化石(約2万年前の成人女性)のコンピューター断層撮影(CT)画像を基に樹脂模型を作り、さらに頭骨内部をビデオ撮影するなどして詳しく脳容量を測定した。その結果、原人の脳サイズは426(±3)㏄と、現代人(約1300㏄)の3分の1程度であることが分かった。脳の大きさと体格の比率について、世界各地の現代人20集団のデータを解析した結果、フローレス原人の脳サイズは、病気などによるものではなく、決して不自然ではないことが分かった。

 これまで「フローレス原人」の進化モデルとして、(1)200万年前にアフリカにいた小柄な最初期の原人「ホモ・ハビリス」が祖先だとする説。(2)それよりも進歩的で身長が160-170センチと大柄で脳も大きく、170〜5万年前にアジアにいたジャワ原人や北京原人などの「ホモ・エレクトス」が祖先だとする説があった。

 研究チームは、ホモ・ハビリス級の原始的な人類がアジアにいたという化石証拠が見つかっていないことから(1)を否定。(2)については、進化の過程での“劇的な脳サイズの縮小”が問題視されていたが、100万年前頃の「初期のジャワ原人」の脳サイズ(991cc)を再検討して、860ccであることが分かった。その結果、今回得られたフローレス原人の脳サイズとの差が縮まることになり、「大柄な初期ジャワ原人が孤島へ渡り、著しく矮小化することによってフローレス原人が生まれた可能性が高い」と結論づけた。「原人以降の人類進化は身体・脳サイズの大型化に特徴づけられるが、それは意外に柔軟性に富んでおり、条件によっては全く逆方向への進化もあり得たことが示唆される」と説明している。

 今回の研究は、日本学術振興会研究費補助金(基盤A)と文部科学省新学術領域研究の助成で行われた。

実物大(身長110センチメートル)に復元した「フローレス原人」とフローレス島にいた動物たち (提供:国立科学博物館〈常設展〉)
実物大(身長110センチメートル)に復元した「フローレス原人」とフローレス島にいた動物たち (提供:国立科学博物館〈常設展〉)

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