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発熱で免疫細胞が活発化する仕組みを解明

2012.04.11

 病気になったときに発熱するのは、私たち自身が病気と戦う力を増強するためかもしれない。そうした免疫のメカニズムを裏付ける分子レベルでの研究結果を、自然科学研究機構生理学研究所・岡崎統合バイオサイエンスセンターの加塩麻紀子研究員と富永真琴教授らのグループが、米国科学アカデミー紀要(PNAS)オンライン版(9日付)に発表した。

 グループの研究は、体内に入った病原体や異物を食べる免疫細胞の「マクロファージ」が産出する活性酸素(過酸化水素の一種)と、その細胞膜に存在する陽イオン透過チャネル「TRPM2」の働きの関係を、温度反応性の面から解明したものだ。

 TRPM2が体温近く(約37℃)で活性化する“細胞の温度センサー”としての働きをもつことは、富永教授らが2006年に明らかにしている。今回のマウスの培養細胞による実験で、TRPM2は過酸化水素が存在しない状態では48℃付近の高い温度でしか反応せず、過酸化水素があると体温の平熱域(約37℃)でも活性化するようになることをつかんだ。さらにマクロファージは、過酸化水素があると、平熱域よりも発熱域(約38℃)で強く反応することが分 かった。TRPM2をなくしたマクロファージでは、平熱域と発熱域で変化はなかった。

 富永教授によると、過酸化水素の作用はTRPM2に対する酸化反応で、過酸化水素がTRPM2の働きを調節する「スイッチ」の役割をしている。今回の実験では、TRPM2に作用する部位も特定された。マクロファージの働きを調節する新たな薬剤開発や治療戦略を提供できる可能性が出てきたという。

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