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30年後の化学の夢

2012.03.26

 日本化学会(会長、岩澤康裕・電気通信大学特任教授)は、化学分野の研究において30年後の成果実現を目指す「30年後の化学の夢ロードマップ」をまとめた。概要を学会ウェブサイトで公開しているほか、3月27日午後1時半から慶應義塾大学日吉キャンパス(横浜市、参加無料)で「化学の夢ロードマップ」シンポジウムを開き、希望者に2000円で頒布するという。

 「30年後の化学の夢ロードマップ」は同会内の学術研究活性化委員会の下にワーキンググループを設置し、若手、中堅の研究者らが中心となって執筆した。掲載した「夢」は10の分野で104にものぼる。化学界の現状認識と将来展望を踏まえた上で、解決すべき社会的な諸課題を含め、さらには「健全な学問の発展のため」の知的好奇心に基づく研究などを取り上げた。今を生きる化学者の「道しるべ」、若い化学者たちの新たなエネルギーを呼び起こす起爆剤になることを期待したいという。

 各分野の主な「夢」の概要は次の通り。

  • 有機化学:有用物質生産のための新合成手法、物質の合成戦略、ボトムアップ集積化による電子材料合成、ゲノム情報に基づく天然物の探索と生産、生命の起源

  • 無機化学:生物無機化学、配位高分子、自己組織化を利用する構造解析、無機材料設計・合成

  • 生化学:たんぱく質化学、細胞、糖鎖、創薬化学、核酸化学、ケミカルバイオロジー、バイオイメージング

  • 物理化学:光源技術、電子波動関数や原子の動きを可視化する測定法、生体内における生体分子の可視化技術、金属ナノ構造により光を局在化させる技術、原子・分子の操作技術

  • ナノテクノロジー:クラスターとナノ粒子、炭素系ナノ材料、生体機能材料とナノテクノロジー、分子機械

  • 「未来課題」(実現の見通しがつきにくいが、夢のあるテーマ):電子顕微鏡下での化学、炭素材料の自由形成、DNAロボティクス、生命の起源

  • エネルギー・資源:太陽電池技術、蓄電池技術、燃料電池、資源の循環、光触媒技術、人工光合成

  • 環境分野:グリーンケミストリーと触媒技術、計測・診断技術、資源・エネルギーと環境、食料と水、リサイクル技術

  • 医療・健康・安全・安心:がん・アルツハイマー治療、疾患の予測・予防、細胞治療・再生医療、食品高度分析などの健康分野、バイオセンサーなどの安全・安心分野

  • 材料化学:エレクトロニクス材料、超伝導材料、メタマテリアル、自己修復材料、生体適合材料

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