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iPS細胞経ず目的の細胞作製に成功

2012.03.15

 iPS(人工多能性幹)細胞を作製する過程を経ず、ヒトの皮膚細胞から免疫細胞の一つであるヒト単球細胞をつくり出すことに理化学研究所の研究グループが成功した。この手法はヒト免疫細胞に限らず、ほかの細胞の作製にも使えることから、再生医療や創薬開発など先端医療への貢献が期待できる、と研究グループは言っている。

 理化学研究所オミックス基盤研究領域LSA要素技術開発グループの鈴木治和プロジェクトディレクターと鈴木貴紘特別研究員らは、特定の細胞をつくる際に重要な役割を担っている転写制御ネットワークを解析し、再構築することで細胞を別の細胞に変えてしまうことが可能ではないか、と考えた。皮膚から簡単に採取でき、山中伸弥京都大学教授によって作製されたiPS細胞でも使われたヒト繊維芽細胞と、ヒト単球細胞の転写因子発現の様子を比較し、違いを調べた。次にヒト単球細胞で重要な働きをしている転写因子を絞り込み、これら20の因子の制御関係を調べたところ、そのうちの4つが最も多くの因子を制御している重要な因子であることを突き止めた。

 これら4つの転写因子をヒト繊維芽細胞に導入したところ、繊維芽細胞にはない炎症反応、サイトカイン分泌といった単球細胞特有の機能を持つ細胞に転化していることが確かめられた。半分以上の遺伝子が単球細胞と同様の遺伝子発現をしていることも分かった。

 iPS細胞は、当初、指摘された分化した後の細胞ががん化する危険性については解決可能な作製法が見つかっているが、作製効率が低いという課題が残っていると言われる。研究グループによると、iPS細胞を経由せず目的の細胞に転化できる新しい手法は、作製期間も2週間-1カ月程度で済むという。

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