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インフルエンザウイルスの増殖に関わるヒト細胞タンパク質特定

2012.03.07

 インフルエンザウイルスは、ヒトなどの宿主細胞にある特定のタンパク質を利用して増殖していることが、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授らの研究で分かった。このタンパク質は全ての型のインフルエンザに共通していることから、薬剤耐性が生じにくい抗ウイルス薬の開発につながると期待される。5日付の米国科学アカデミー紀要「PNAS」に発表した。

 河岡教授らは質量分析法を用いて、ヒトの細胞に感染したインフルエンザウイルスがどのようなタンパク質とよく結びつき、増殖するかを調べた。その結果、エネルギー生産を担うタンパク質複合体「ATP合成酵素(F1Fo-ATPase)」のうち、特に細胞表面にある「F1β(ベータ)」というタンパク質が関係していることが分かった。「F1β」の量を減らすと、細胞から放出されるウイルスの量も減った。電子顕微鏡による観察でも、ウイルス数の減少が確認できた。

 さらに現在流行しているA型やB型、2009年に大流行した新型(H1N1)などのインフルエンザウイルスでも調べたところ、これら全てのウイルス増殖にも「F1β」が重要な役目を担っていることが分かったという。

 ウイルスが自分の増殖のために利用するタンパク質は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などでは明らかになっているが、インフルエンザウイルスで特定されたのは世界で初めて。ウイルスそのものではなく、ヒトの細胞のタンパク質を標的とする新しい抗インフルエンザウイルス薬の開発の可能性も出てきた。

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