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「十二指腸潰瘍の人は胃がんになりにくい」のはなぜか?

2012.03.05

 世界全体で約半数が感染しているといわれるヘリコバクター・ピロリ菌は、胃がんや十二指腸潰瘍の原因となっている。しかし同じピロリ菌によっても、胃がんになりやすい人と十二指腸潰瘍になりやすい人がおり、さらに十二指腸潰瘍の患者は胃がんになりにくいことが医学的に知られている。この違いは血液型とある遺伝子によって決定されていることが、東京大学医科学研究所などの研究によって明らかになった。

 同研究所シークエンス技術開発分野の松田浩一准教授らは、十二指腸潰瘍の患者7,072人と健常者2万6,116人の約60万カ所の遺伝情報の違いと十二指腸潰瘍になりやすさの関係を調べた。その結果、血液型を決めているA、B、O遺伝子と、細胞の分裂・増殖に関係し、さらに胃がんのリスク遺伝子としても知られるPSCA遺伝子が関わっていることが分かった。

 A、B、O遺伝子についてみると、十二指腸潰瘍になる人は血液がO型の方がA型に比べて1.43倍も多かった。他の血液型では差がなかった。

 PSCA遺伝子には1つの塩基が置き換わったことによって十二指腸潰瘍に「なりやすいタイプ」と「なりにくいタイプ」があり、「なりやすいタイプ」では潰瘍のリスクが1.84倍増えるが、胃がんのリスクは半分(0.59倍)ほどだった。さらにこれらの遺伝子タイプを人種間で比較したところ、日本人では胃がんになりやすく、十二指腸潰瘍になりにくいタイプが11の人種のうちで最も多かった。

 ピロリ菌は、日本人では50歳以上で50-70%が感染していると言われる。血液型やPSCA遺伝子を調べることで、十二指腸潰瘍や胃がんのなりやすさが分かり、予防や早期発見につなげることが期待できるという。

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