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一般の顕微鏡で蛍光観察が可能になった

2012.02.10

 一般の顕微鏡に取り付けるだけで蛍光観察が出来る特殊アダプターを、理化学研究所や大阪大学、近畿大学の研究チームが開発した。高価な蛍光顕微鏡の必要性がなくなるので、中高などの教育現場や途上国の研究発展に役立つものとみられる。米国のオンライン科学誌「プロスワン(PLoS ONE)」(2月8日付け)に発表した。

 生命科学の分野では、蛍光色素で細胞を染め分け、その蛍光を利用して細胞内の構造や分子の動きなどを可視化し、がんなどの特定の細胞を識別できるようになった。しかし、蛍光を観察するには、高出力の水銀ランプやレーザーなどの光源を備えた高価な(300万円-数千万円もの)蛍光顕微鏡が必要だった。

 同研究所発生・再生科学総合研究センターの若山照彦チームリーダーらは、通常の顕微鏡に「励起フィルター」を取り付けるアダプターを開発した。励起フィルターは光源から必要な励起光を取り出し、試料に照射し蛍光を出させる役目を担う。蛍光顕微鏡に内蔵された励起フィルターは可視光を遮断するため、視野は暗く細胞の全体像は見えない。そのため蛍光顕微鏡には蛍光観察を行う水銀ランプと、細胞全体を見るためのハロゲンランプの2つの光源を用意している。これに対し研究チームは、励起フィルターとアダプターの間にハロゲンランプの光が漏れ込むように隙間を作り、さらに光量を調節する絞りを付けて、1つの光源で蛍光と可視光を同時に見ることが出来るように工夫した。

 開発したアダプター付き顕微鏡の効果を試したところ、マウスの初期胚や精母細胞、卵子の蛍光観察に成功した。蛍光顕微鏡では高出力の光源を用いるために色素が退色し、30秒以内で観察できなくなるが、アダプター付き顕微鏡では低出力のハロゲンランプを光源としているために退色が進まず、10分間連続で観察できた。

 さらにアダプター付き顕微鏡では、卵子全体と卵子内の核を同時に見ながら除核できるため、その確認作業が不要で、経験の浅い人でも容易に除核ができる。実際にこの顕微鏡で観察しながらマウスの除核を行ったところ、染色体の取り残しが防げ、無事にクローンマウスを作製することができたという。

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