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シーラカンス全ゲノム解読 魚と四足動物双方に共通の配列

2011.12.28

 「生きた化石」といわれる深海魚シーラカンスの全ゲノム塩基配列が、東京工業大学大学院生命理工学研究科、国立遺伝学研究所、東京大学大学院 新領域創成科学研究科の研究者たちによって解読された。

 ゲノムの規模は通常の魚の3倍、ヒトを含めた哺乳類と同等の大きさで、魚類と四足動物の双方に共通するゲノム配列を持つことが明らかになった。シーラカンスの塩基配列をさらに詳しく調べることによって、ひれしか持たない魚類から四つの足を持つ哺乳類など陸上動物への進化過程について重要な情報が得られると研究者たちは期待している。

 シーラカンスは、1938年に南アフリカで生きた個体が発見されるまで、6,500万年前に絶滅したと信じられていた。化石として発見されている古代の個体と現在生存している個体がほとんど変わっていないという珍しい特徴を持つ。4つのひれの構造が足に似ており、魚から哺乳類などへの移行段階にある貴重な種として学問的にも関心が高い。

 今回の成果は、岡田典弘・東京工業大学大学院教授を代表とする日本学術振興会アジアアフリカ学術基盤形成事業「シーラカンスを中心とした、タンザニア水域重要魚種の保全研究」によって得られた。シーラカンスは絶滅の恐れのある野生動植物の国際取引を禁じたワシントン条約で捕獲も禁止されている。研究には、2007年にタンザニア北部のタンガで偶然混獲された雌の体内から発見された稚魚のえら、心臓、筋肉のDNAが使われた。岡田教授らは、タンザニア水産研究所に冷凍保存されていた稚魚を、ワシントン条約に基づいた許可を得て輸入した。

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