大気中の二酸化炭素(CO2)を取り込む植物の機能に重要な役割を果たしている植物ホルモンの立体構造を、北陸先端科学技術大学院大学と石川県立大学の研究チームが解明した。このホルモンは「ストマジェン」と呼ばれ、昨年、発見されたばかり。植物の光合成効率は、大気中からCO2を取り込む能力によって左右される。「ストマジェン」は、CO2を取り込む葉の気孔の数を調節する働きをすることが知られていたが、立体構造を突き止めるのが難しく、気孔の数を調節するのにどの部位が関わっているか分からなかった。
大木進野・北陸先端科学技術大学院大学教授と森正之・石川県立大学准教授らは、新しいタンパク調製法を用いることで、ペプチドホルモンである「ストマジェン」の立体構造と、気孔の数を調節する部位を明らかにすることに成功した。このタンパク調製法は、生理活性を保ったままタンパクを大量につくるだけでなく、特定の原子を各種の安定同位体で標識することができるという優れた特徴を持つ。
今回の成果を基にして、ペプチド農薬の大量生産や新薬開発などの産業応用、さらに将来は大気中のCO2削減などへの応用が期待できると研究チームは言っている。
今回の成果を生んだ新しいタンパク調製法は、科学技術振興機構の研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)の一環として開発された。