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日本学術会議6つのエネルギー選択肢コスト提示

掲載日:2011年9月26日

日本学術会議・エネルギー政策の選択肢分科会は6月の中間報告で示した将来のエネルギー選択シナリオにコスト試算などをつけて肉付けした「エネルギー政策の選択肢にかかわる調査報告書」をまとめ、22日公表した。

シナリオは、即座に原子力発電を停止から、段階的にやめる、原子力発電を中心的エネルギー源として活用するまで6つの選択肢をあらためて提示し、意思決定は国民がすべきだとしている。各種電源ごとに試算結果を示した発電コストに不確かさがあることも指摘するとともに、「これまで関係省庁、研究機関、企業などから試算例の報告があるが、それらの間には有意な相違が存在する」と政府が電力業界などからの資料を基に公的に公表している原子力発電コストについて疑念を示している。報告が挙げている3つの試算例によると、原子力発電の発電コストは、経済産業省資源エネルギー庁の1キロワット時当たり4.8-6.2円(運転年数40年として)、大島堅一・立命館大学国際関係学部教授の同12.23円、電気新聞報道による政府試算の同15.8-20.2円と大きな差がある。

6つの選択肢(シナリオ)の概要と試算結果は次の通り。ただし、電力料金への影響については、現在の電力料金が原子力発電のコストを1キロワット時5.9円として決められているとして試算したもので、今後原子力発電のコストが見直された場合は変更が必要になるとことわっている。

  1. 速やかに原子力発電を停止し、当面は火力で代替しつつ、順次再生可能エネルギーによる発電に移行する。
    火力発電の依存率を当面上げることに伴う燃料費増は、年1兆5,000億円。


  2. 5年程度かけて、電力の30%を再生可能エネルギーと省エネルギーで賄い、原子力発電を代替する。この間、原子力発電のより高い安全性を追求する。
    5年後に標準的家庭の電力料金が月800円程度上がる。


  3. 20年程度かけて、電力の30%を再生可能エネルギーで賄い、原子力発電を代替する。この間、原子力発電のより高い安全性を追求する。
    標準的家庭の電力料金は10年後に月700円程度、20年後に2,300円程度上がる。


  4. 今後30 年の間に寿命に達した原子炉より順次停止する。その間に電力の30%を再生可能エネルギーで賄い、原子力による電力を代替する。この間、原子力発電のより高い安全性を追求する。
    稼動予定年数まで利用する原発が出てくる。電力料金への影響はCと同じ。


  5. より高い安全性を追求しつつ、寿命に達した原子炉は設備更新し、現状の原子力による発電の規模を維持し、同時に再生可能エネルギーの導入拡大を図る。
    標準家庭の電力料金は10年後は月160円程度下がる。原子力発電の安全性に対する不安と、現在未達成の放射性廃棄物などの最終処理、貯蔵などについての課題が残る。


  6. より高い安全性を追求しつつ、原子力発電を将来における中心的な低炭素エネルギーに位置付ける。
    標準家庭の電力料金は10年後は月260円程度下がる。Eと同様、原子力発電の安全性に対する不安と、現在未達成の放射性廃棄物等の最終処理、貯蔵等についての課題が残る。

報告はまた、「温室効果ガスを排出しない安定した電力供給が可能だが、放射能汚染を伴う甚大な事故の可能性がある。コスト面でも大幅な見直しが必要で、放射性廃棄物の長期にわたる増加と管理という重大な課題を子孫に残す問題点がある」(原子力)、「安定した電力供給を可能とするが、温室効果ガス排出が避けられず、気候変動のリスクがあり、原子力エネルギーと同様、資源の枯渇や国際的な需給バランスの変化により、価格変動のリスクがある」(化石エネルギー)、「温室効果ガス排出や放射能汚染の恐れはないが、導入拡大のためには国内総生産(GDP)の1%近いかなり大きな新規投資を長期間にわたり継続する必要がある。その経済的負担の分配、設備設置に要する土地の確保、景観や環境・生物多様性などの問題対応に摩擦が発生するリスクがある」(再生可能エネルギー)と、それぞれのエネルギーに関わる課題とリスクをそれぞれ列挙している。

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