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東京湾、伊勢湾に高潮被害の恐れ予測

2011.09.13

 温暖化による台風の強大化が既に始まっていると指摘されている中、既に東京湾や伊勢湾では過去最悪の潮位を上回る高潮が発生する可能性がある、というコンピュータシミュレーション結果を防災科学技術研究所が公表した。

 東京湾では、1917年の東京湾台風で観測された2.3メートルという潮位が観測史上最大とされている。コンピュータシミュレーション結果では、江戸川河口で3.1メートル、湾奥の葛南では3.3メートルと過去の記録を大幅に上回る潮位が予測された。1959年の伊勢湾台風(死者・行方不明5,098人)で3.5メートル(名古屋港)という最高潮位が記録されている伊勢湾でも、名古屋港で5.6メートルの潮位に達するという予測結果になった。

 温暖化の進展により、既に台風やハリケーンの強度が高まっていることは「2007年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第4次評価報告書でも指摘されている。同報告書が示した将来予測のうち「エネルギー源のバランスを重視しつつ、高度経済成長が維持される」(A1Bシナリオ)で事態が進行した場合、2099年9月時点で潮位がどのようになるかという予測結果も、防災科学技術研究所は公表した。

 それによると、潮位はさらに高くなり、東京湾の東京港で3.4メートル、葛南で4.1メートルと、現在防災上の基準となっている計画潮位2.0-3.0メートルを大きく上回った。伊勢湾でも名古屋港で6.9メートル、中部国際空港で3.54メートルの潮位が予測された。この数値にはIPCC予測のうちの海面上昇分、0.48メートルが含まれてなく、これを含めると潮位が最も高くなる新満月時には中部国際空港が壊滅的状況に陥る事態も懸念される、と防災科学技術研究所は言っている。

 2008年に環境省の地球温暖化影響・適応研究委員会が公表した報告書「気候変動への賢い適応」によると、東アジアの降水量は1961-90 年の平年値と比べ、2010-39 年には2-3%(夏季)、5-6%(冬季)増へ、2070-99 年になると8-14%(夏季)、15-21%(冬季)さらに増えるとされている。

 また、同じ年に日本学術会議の国土・社会と自然災害分科会が公表した提言「地球環境の変化に伴う水災害への適応」 では、世界の多くの地域で異常多雨の出現数が増加しており、日本でも最近30 年間で日降水量200ミリ以上の大雨の日数が20 世紀初頭の30 年間に比べて約1.5倍に増加しているとされている。

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