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超臨界CO2ガスタービンの原理実証実験に成功

2011.06.29

 新しい発電システムとなる可能性を秘めた超臨界CO2ガスタービンの実現に一歩近づく実験に東京工業大学やエネルギー総合工学研究所の研究グループが成功した。

 超臨界CO2というのは、70気圧以上、31℃以上では固体、気体、液体の区別がつかない状態になっているCO2(二酸化炭素)を指す。現在、広く使われている蒸気タービンは水蒸気の力でタービンを回す。超臨界CO2を水蒸気の代わりに用いるガスタービンは、1,000-10 万キロワット程度の中小型機で従来の水蒸気タービンに比べ1-2 割高い発電効率が期待できるとされている。

 実験に使われた試験機は、宇多村元昭・東京工業大学原子炉工学研究所特任教授が基本設計を担当し、エネルギー総合工学研究所、熱技術開発株式会社、東京大学を加えた産学連携チームが、高効率で圧力損失の小さい熱交換器と、圧縮機やタービンを高速で効率良く回すガス軸受などを開発して昨年秋に完成した。以来、装置部品の改良などを加えた試験運転を重ねた結果、外部からの熱入力のみによって約200ワットの電気出力を継続的に取り出すことに成功した。

 超臨界CO2ガスタービンの原理は1969 年に発表され、近年、米国、日本、韓国、フランスで試験装置を使った研究が盛んに行われている。米国のサンディア国立研究所と東京工業大学による圧縮機の運転結果が昨年、発表されたが、圧縮機とタービンを組み合わせた発電試験は今回が初めての報告となる。

 今回の成果について研究グループは「超臨界CO2ガスタービンが原理的に成立することを世界で初めて立証した。ガスタービンメーカーなどとも協力しながら大容量機の試作と運転試験を行い、2010 年代後半の実用化を目指す」と言っている。

 超臨界CO2ガスタービンは、超臨界状態のCO2 を80-200 気圧程度、35-600℃程度の範囲で圧縮、加熱、膨張、冷却を行う。閉サイクル・外部加熱方式のため、あらゆる燃料だけでなく排熱や太陽熱のような燃料以外の熱源も利用できる。システムがコンパクトになるので設備費も安く、東日本大震災で見直されている自家発電にも適した発電方式として関心が高まっている。

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