ニュース

価値ある研究成果の鍵は目標設定に

2010.11.05

 研究プロジェクトの野心的な目標設定あるいは科学の進歩の方向を見据えた目標設定が、被引用数が多い論文と並の論文を分ける鍵となる-。科学技術政策研究所と一橋大学が実施した大規模アンケートでこうした事実が明らかになった。

 アンケートは、日本の科学者を対象に昨年暮れから今年春にかけて行われ、約2,100件の回答を得た。2001-06 年に発表された論文のうちで日本が関与しているものから、被引用数が上位1%(トップ1%論文)とそれ以外の論文(通常論文)を抽出し、その著者に対して論文を生み出した研究プロジェクトについて尋ねている。

 どのような研究マネジメント(管理)を実施したかどうかを聞いた項目で、最も多かったのは「学会発表を通じた情報の共有・研究の評価」。トップ1%論文の著者の91.0%、通常論文著者の90.6%が行ったと答えており、論文の価値いかんにかかわらず学会発表という場、行為を重要視していることを裏付けていた。「ミーティングを通じたチーム全体での情報共有」も同様にいずれの論文著者とも重要な研究マネジメントと見ていることも分かった。

 興味深いのは、「研究プロジェクトの野心的な目標設定」と「科学の進歩の方向を見据えた目標設定」が、トップ1%論文を生む率が高く、かつ通常論文に比べてその差が大きく出た研究マネジメントであることが明らかになったこと。「研究プロジェクトの野心的な目標設定」を実施したという答えがトップ1%論文著者で70.4%を占めるのに対し、通常論文著者は58.5%しかいない。同様に「科学の進歩の方向を見据えた目標設定」を実施したトップ1%論文著者が78.6%いたのに対し、通常論文著者は67.2%と明らかな差が出た。 面白いことに同じ目標設定でも「社会の進む方向を見据えた目標設定」となると、実施したのはトップ1%論文著者、通常論文著者とも44-45%と低く、さらにトップ1%論文著者の方が通常論文著者より、社会の進む方向を見据えた目標設定を実施している人がわずかながら少ないという結果になっている。

関連記事

ページトップへ