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スタチン慢性腎臓病にも治療効果

2009.11.02

 根本的な治療法のない慢性腎臓病に高脂血症の治療薬として広く使われているスタチンが効果を持つことを、東北大学と慶應義塾大学の研究者たちが発見した。

 阿部高明・東北大学大学院医工学研究科・医学系研究科教授と曽我朋義・慶應義塾大学先端生命科学研究所教授らは、2004年にヒト腎臓の物質排泄に重要な役割を担うタンパク遺伝子「OATP-R」を発見し、腎不全時にはその発現量が低下し薬物や腎不全物質が排泄されなくなることを確認している。

 今回、この「OATP-R」を腎臓だけに発現させた遺伝子改変マウスをつくり調べたところ、尿毒症物質の排泄が促され、血圧の正常化や腎臓内の炎症改善効果、心肥大の抑制、生存率の向上が確かめられた。次にOATP-Rを腎臓で増強させる薬剤を探したところ、スタチンにその効果があることが分かった。

 慢性腎不全患者にスタチンを投与することで、腎不全患者の腎障害の進行を抑制し透析導入時期を遅らせる治療効果が期待できる、と研究者たちは言っている。

 スタチンは、遠藤章・東京農工大学名誉教授が1973年、最初に青カビから発見し、血中コレステロールを下げる薬として商品化された。その後、冠動脈疾患と脳卒中の予防に有効なことが立証され、現在世界中で毎日3,000万人以上の患者に投与されている。

 この研究成果は、科学技術振興機構「産学共同シーズイノベーション育成ステージ化事業」の支援で得られた。

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