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2020年代にアジアの水稲生産量減少

2009.06.08

 気候変化の影響で2020年代にアジアの水稲生産量はまず間違いなく減少することが、国立環境研究所の研究者たちの研究で明らかにされた。
人為的な原因で大気中の温室効果ガス濃度が増加、地球の平均気温が上昇しつつあることは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の調査報告でほぼ確実とされている。一方、その影響については世界に数多くの気候モデルがあり、影響推計結果が異なるためどれを信用すればよいのか分からない、という問題点も指摘されている。

 増冨祐司ポスドクフェロー(現、埼玉県環境科学国際センター主任)ら国立環境研究所の研究者たちは、多数の気候モデルを使用すると同時に統計的アプローチを用いることにより、気候変化によるアジア地区の水稲生産量変化を定量的に評価した。

 その結果、2020年代は1990年代に比べ、どの二酸化炭素(CO2)排出シナリオにおいても、高い確率で生産量が減少するという結果が得られた。生産量減少の大きさは2.5-4.5%だった。

 2050年代には、CO2濃度増加がイネの光合成を促進する働きが生産量減少を相殺する効果をもたらし、生産量は1990年代に比べあまり変化がないという結果となった。しかし2080年代になると、CO2濃度増加によるプラス効果も頭打ちになり、再び水稲の生産量は減少する。特にC02排出量が大きい場合を想定すると1990年代に比べ10%近い生産量減少となるという結果となった。

 2020年代に想定される生産量減少に対する早急な適応策と、2080年代に想定される長期的影響に対するC02排出量削減対策が必要、と研究者たちは言っている。

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