ニュース

スギ花粉症ワクチンの臨床試験前研究開始

2008.07.31

 スギ花粉症ワクチンの実現に向けて大きく前進する橋渡し研究を、理化学研究所がスタートさせた。この研究は臨床試験までを見据えたもので、まず厚生労働省が定める患者への投与基準を満たしたワクチンの製造・毒性試験を開始する。

 アレルギー疾患に対しては、体内に特定のアレルギー物質(抗原)を低濃度から高濃度へ少しずつ投与する減感作療法というのが古くから知られている。しかし、スギ花粉症は、天然スギ花粉から抽出した標準エキスが、スギ花粉抗原と反応してアナフィラキシーショックと呼ばれる障害を起こす恐れが高いことから、この減感作療法も使えない。

 理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター(谷口克センター長)の石井保之ワクチンデザイン研究チームリーダーらが独自に開発したスギ花粉症ワクチンは、2種類のスギ花粉主要抗原を遺伝子工学的手法で合成したものを用いており、既に動物実験で顕著な効果が確かめられている。さらにアナフィラキシーショックの危険性も少ないことから、根本的な治療薬としての期待が高まっている。

 薬品として認可されるまでには臨床試験という大きな関門が控えているが、理化学研究所の橋渡し研究は、これまでの研究成果を臨床試験につなぐ役割をもつ。具体的には、今後、医薬品や医薬部外品の製造管理と品質管理の基準を満たすワクチンの製造を行い、毒性試験などの橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)非臨床研究を終了させる。さらに秋田大学など7大学や相模原病院などと構成するアレルギー臨床ネットワークを介して、患者を対象とした橋渡し研究臨床研究に進む計画だ。

 根本治療薬がなく対症療法しかないアレルギー疾患は、日本ではこの50年間で患者が10倍増えたと言われている。国民の20-30%が悩まされていると言われる花粉症の中で最も多いのがスギ花粉症で、国民の13-16%が罹患しているとされている。

関連記事

ページトップへ