ニュース

養豚汚水からリンを効率よく回収、再利用

2008.06.20

 養豚場からの排出汚水から簡単な設備でリンを回収、肥料などに再利用できる技術を農業・食品産業技術総合研究機構の研究グループが開発した。

 既設の汚水処理施設の改善でも対応可能で、さらに近年の穀物増産などにより価格が急騰しているリンを回収、再利用できることから、実用化の可能性が大きい技術と期待されている。

 農業・食品産業技術総合研究機構の畜産草地研究所を中心とした研究チームは、豚舎から排出される汚水にリン酸イオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオンなどが、リン酸を結晶化するMAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)反応にちょうど適した濃度で含まれていることに着目した。ただし、結晶にするには水素イオン濃度(pH)を8-8.5にする必要がある。研究チームは、汚水が流入する部分に、汚水中に空気を送る曝気(ばっき)槽を設けることで、この問題を解決した。曝気により汚水中に溶存していた二酸化炭素(CO2)を追い出し、pHを8-8.5に上昇させることができる。

 曝気槽に金網などの回収用部材を沈めると、表面にMAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)が付着し、付着したMAPは引き揚げた回収用部材から簡単にはがし落とすことができる。この方法で汚水中のMAPの半分、汚水1立方メートルにつき最大170グラムのMAPを回収できることが確かめられた。回収したMAPは日干しするだけで、そのままリン酸肥料として再利用でき、実際の栽培実験で特にタマネギについては市販のリン酸肥料より効果が高いことなどが確かめられた。

 研究チームは、陶磁器の釉薬(うわぐすり)としての利用も検討している。

 日本は、リンをすべて輸入に頼っている。

ページトップへ