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四国のツキノワグマ独自進化の希少群

2008.04.14

四国で調査のため捕獲、放獣されたツキノワグマ(2002年7月撮影) (提供:NPO法人四国自然史科学研究センター)

 絶滅の恐れがある四国のツキノワグマは、本州のツキノワグマと遺伝的に異なる希少な個体群であることが、WWF(世界自然保護基金)ジャパンとNPO法人四国自然史科学研究センター、九州大学の調査、研究で明らかになった。

 ツキノワグマは、かつては本州、四国、九州の山林に広く生息していたが、生息域の開発や狩猟に加え、スギやヒノキなどの針葉樹の植樹によってすみかが狭められてきた。九州ではすでに絶滅したとみられており、四国でも徳島県と高知県にまたがる剣山山系一帯にわずか十数頭から数十頭しか生息していないと推定されている。生息数が100頭を下回ると存続するのは難しいと考えられていることから、九州に次いで四国からもツキノワグマの姿が見られなくなるのでは、と心配されている。

 WWFジャパンとNPO法人四国自然史科学研究センターは、2005年以来、剣山山系でツキノワグマを5頭捕獲し、そのうちの4頭に電波発信機を装着して生態調査を続ける一方、小池裕子・九州大学大学院比較社会文化研究院自然保全研究室教授に協力を求め、捕獲した4頭の血液試料を用いた遺伝子解析を続けていた。

 細胞小器官「ミトコンドリア」のDNAを調べ、遺伝的な系統樹を作成した結果、日本に生息するツキノワグマは大陸に生息するツキノワグマと分岐した後、最初に四国に住むツキノワグマが分かれ、本州地方とは異なる進化を遂げたことが分かった。

 生息頭数の減少による近親交配や遺伝的劣化なども考えられることから、四国のツキノワグマの遺伝的多様性やどの程度危機的な状況であるか、さらに遺伝子解析を続け調べたい、とWWFジャパンは言っている。

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