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シロアリの生命力の秘密解明

2008.04.02

 身の周りでは厄介者だが、自然界では倒木を分解する有益な昆虫であるシロアリに共生する細菌のゲノム解読に、理化学研究所の研究グループが成功した。

 この細菌は、シロアリの腸内でセルロースを分解する役割を果たしている原生生物の細胞内にだけ生息している。細菌のゲノム解読の結果、シロアリは原生生物に餌である木片(セルロース)を与え、その見返りに、原生生物はシロアリと共生細菌にセルロース分解産物を与え、共生細菌は原生生物とシロアリが合成できない窒素化合物を提供するという、多重共生関係が成り立っていることが初めて明らかになった。

 地球上の99%以上の微生物は現在の技術では培養できず、今回の研究対象となった細菌もこうした未培養微生物の1種だったが、本郷裕一・協力研究員、大熊盛也・副主任研究員、豊田敦・上級研究員、服部正平・客員主管研究員、ヴィニート・シャルマ・リサーチアソシエイトら理化学研究所の研究者たちは、ゲノムをDNA合成酵素で1,000万倍に直接増幅するという方法で、ゲノム配列の完全解読を成功させた。

 今後、シロアリの木質分解機構が明らかになれば、人の食料と競合しない木質バイオマスを原料としたバイオ燃料開発のヒントを得ることが期待できる。またこの細菌が宿主の原生生物とともに水素を発生することも明らかとなったことから、クリーンなエネルギー開発への応用も考えられる、と研究者たちは研究の進展に期待している。

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