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乾燥しても生き残れる昆虫の秘密解明

2008.03.31

 ネムリユスリカという昆虫が炎熱下で水分をほとんど失っても死なず、水分を得ると息を吹き返すメカニズムを東京工業大学と農業生物資源研究所の研究チームが解明した。

 櫻井実 氏・東京工業大学バイオ研究基盤支援総合センター教授らが研究対象としたのは、アフリカ中部半乾燥地帯原産のネムリユスリカの幼虫。岩盤の窪みなどにできた小さな水たまりで生活する。生物の体の60〜70%は水から成り、この水のおかげで生命体にとって不可欠なタンパク質や核酸、細胞膜がその構造、機能を維持することができている。ところが、ネムリユスリカの幼虫は、カラカラに乾燥(含水率3%)しても、水に戻せば1時間程度で蘇生することが知られていた。

 櫻井教授らは、赤外吸収スペクトロ測定という手法で、干からびたネムリユスリカの体を調べたところ、トレハロースという糖が体内に万遍なく蓄積され、水に代わって細胞膜の表面に結合していることが分かった。トレハロースはガラス状態になっており、生体物質をカプセル状に包む込むことから、細胞膜が通常の生命活動状態の時同様、流動性の高い状態に保たれていることも確認された。

 トレハロース自体は、きのこなど乾燥に強い動植物に含まれていることが分かっており、農業生物資源研究所では既に、トレハロースを特異的に細胞の内外に輸送するタンパク質の遺伝子をネムリユスリカから単離することに成功している。

 今後、研究を進めることで、細胞などの生体組織を生きたまま常温乾燥する方法や、乾燥に強い作物の開発などが期待できる、と研究者たちは言っている。

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