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シジミに水質浄化能力 セルロースを分解

2008.03.05

 河口域にすむヤマトシジミが陸から流れ込む植物由来の有機物を分解し、沿岸域の水質浄化に大きな役割を果たしていることを、京都大学の研究グループが突き止めた。

 沿岸域には河川を通じて陸上からさまざまな物質が流れ込んでおり、その中で最も多いのは、陸上植物由来の有機物といわれている。アサリやヤマトシジミなど干潟に住む生物が有機物を餌として取り込むことで水質浄化の役目を果たしているということは、これまでも指摘されていた。しかし、本当にこれらの2枚貝が、陸から流れてきた有機物を直接、餌として体内に取り込んでいるかどうかは分かっていなかった。

 京都大学大学院農学研究科の笠井亮秀・准教授、豊原治彦・准教授らは、2枚貝の体内に含まれる炭素や窒素の同位体比と、陸起源有機物のほか餌と考えられる植物プランクトン、底生微細藻類の同位体比を比べる方法により、実際に何を食べているかを調べた。この結果、アサリが植物プランクトンや底生微細藻類を餌にしているのに対し、ヤマトシジミは、陸起源有機物を餌にしていると考えられることが分かった。

 有機汚濁や富栄養化などの環境悪化により大きな影響を与えているのは、分解しにくいセルロースを含む陸から流れ込む有機物の方と考えられている。これまで、陸上ではシロアリなどがセルロースを分解する酵素の遺伝子を持っており、森林の草木や落ち葉などを分解していることが分かっている。

 研究グループが、アサリとヤマトシジミのセルロース分解能力を調べたところ、ヤマトシジミがシロアリと似た自前のセルロース分解酵素を持っており、その活性も強いことが分かった。アサリは、活性が弱かった。

 ヤマトシジミは干潟における代表的な生物だが、どこの干潟にもいるわけではない。今後、ヤマトシジミ以外で同様の働きをしている生物がいないかどうか調べ、干潟が環境に果たす役割についてさらに詳しく解明したい、と研究者たちは言っている。

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