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粘膜感染症に効く飲むワクチン開発

2007.11.06

 多くの感染症に対し効果があり、しかも注射する必要がない経口ワクチンを、東京大学医科学研究所と科学技術振興機構の研究チームが開発した。マウスを使った実験で効果が確認されており、簡便で安全な次世代型ワクチンとして有望視されている。

 清野宏・医科学研究所教授、野地智法・科学技術振興機構研究員、幸義和・医科学研究所助教らが開発した新しいワクチンは、粘膜ワクチンと呼ばれ、全身の免疫機能だけでなく、消化器や呼吸器の粘膜組織が持つ粘膜免疫システムにも働く能力がある。粘膜ワクチンは、インフルエンザやエイズ、あるいはボツリヌス菌による重い粘膜感染症に対する効果があるワクチンとして期待されているが、これまで粘膜組織に直接、効果を発揮するワクチンは見つかっていなかった。理由は、粘膜組織の中で免疫機能にたずさわっているM細胞が腸管上皮に少ないため、ワクチンを効果的にM細胞に取り込ませることが難しかったためだ。

 研究チームは、M細胞のみに取り付くモノクローナル抗体を見つけ出し、この抗体に結合させたワクチンを作り出すことで、粘膜免疫システムに効果的に働く経口ワクチンを開発することに成功した。

 現在のワクチンの大半は注射によって接種されている。しかしエイズやエボラ出血熱など新しい感染症や、結核、マラリアなど一時なりを潜めていたものの最近再び流行が心配されている再興感染症の大半は粘膜感染症。これらの予防法として新しい粘膜ワクチンの開発が待たれている。

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