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暗黒エネルギーの質量全宇宙の70%

2007.09.27

重力レンズ現象で観測されたクエーサー
「重力レンズ現象で観測されたクエーサー」
(ハッブル宇宙望遠鏡で撮影)
(提供:NASA/ESA/大栗真宗氏)

 重力と異なり反発する性質を持つとみられる未知のエネルギー「暗黒エネルギー」が宇宙全体の質量の70%を占めることを、理化学研究所と米国スタンフォード大学の国際共同研究グループがクエーサーの観測で突き止めた。

 暗黒エネルギーは、宇宙が膨張していることと、現在の観測手段で確認できる宇宙の質量があまりに少なさ過ぎるという事実を説明するものとして考えられている。しかし、直接観測することはできていない。

 理化学研究所の稲田直久・基礎科学特別研究員、スタンフォード大学の大栗真宗・博士研究員らは、クエーサーが手前にある銀河によって光が曲げられる(陰に隠れて見えないはずのクエーサーが観測できる)重力レンズと呼ばれる現象を利用し、暗黒エネルギーの存在確認に挑んだ。

 クエーサーについては、「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ」と呼ばれる国際共同研究計画が進んでおり、すでに23,000個のクエーサーが発見されている。これらをハワイ大学の2.2メートル望遠鏡、アパッチポイントの3.5メートル望遠鏡、すばる望遠鏡など他の望遠鏡によってさらに詳しく調べた結果、最終的に計11個のクエーサーが重力レンズの影響を受けていることを確認した。

 23,000個のうち11個のクエーサーが重力レンズを受けているという確率は、宇宙の全質量の約70%を暗黒エネルギーが占めていることに相当するもので、これまで宇宙モデルから考えられていた値とも一致する。

 研究グループは、観測結果は、暗黒エネルギーの性質が相対性理論を生み出したアインシュタインの唱えた「宇宙項(宇宙定数)」に矛盾しないと言っている。

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