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花粉が飛散しないイネ開発

2007.09.25

閉花受粉性イネの花の内部の様子(左:通常のイネ、右:閉花受粉性イネ) 閉花受粉性イネでは、おしべは正常だが、鱗被(矢印)が細長く伸張している。 (提供:農林水産技術会議)

 開花せずに実を付けることができるイネを農業・食品産業技術総合研究機構などが開発した。遺伝子組み換え農作物は、病虫害に強いなどさまざまな利点を持つ一方、飛散した花粉によって他の農作物との交雑による危険性が指摘されている。新たに開発されたイネをもとに、花粉飛散による遺伝子拡散を抑制する技術開発を進めたい、と研究グループは言っている。

 通常のイネは、花びらに相当する「鱗被(りんぴ)」という器官があり、これが膨らんで頴(えい)と呼ばれる「もみがら」になる部分を外側に押し出すことで、開花が起きる。

 農業・食品産業技術総合研究機構などの研究チームは、イネの品種「台中65号」の突然変異集団から、頴の外に雄しべを出さず、つまり開花せずに受粉だけはするものを見つけ出した。同機構中央農業総合研究センター北陸研究センターと東京大学の圃場(ほじょう)で栽培したところ、穂の出る日、穂の数、1穂当たりの粒数、粒の形状・重さなど原品種「台中65号」と顕著な差がないことが確認された。

 また、原因遺伝子も特定し、この遺伝子の変異体が鱗被を正常に形成できなくすることによって、受粉はしても開花はしないイネができることも突き止めた。

 遺伝子組み換え作物の安全に対する懸念は、特に日本の消費者に強い。このため、遺伝子組み換え作物が流通している米国などからの日本への農作物輸入品は、遺伝子組み換え作物との交雑、混合を防ぐため、生産、流通段階から分別する契約栽培が普通になっているといわれる。

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