広く知りたい - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」 https://scienceportal.jst.go.jp Fri, 13 Jun 2025 06:04:12 +0000 ja hourly 1 土を生かす ソイルセメントで暮らしと環境を守る https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/videonews/m240001011/ Fri, 13 Jun 2025 06:03:07 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=gateway&p=54289  私たちの安全を守るために欠かせないダムや堤防。これらの建設に用いられるコンクリートに関わる課題に、土を資源として生かして解決しようという取り組みがあります。
【2023年度「STI for SDGs」アワード優秀賞受賞】

再生時間:5分 制作年:2025年

出演・協力機関

秋山祥克(株式会社インバックス代表取締役)

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アイスペース月面着陸また失敗 直前の減速不十分で衝突か https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/clip/20250609_g01/ Mon, 09 Jun 2025 07:41:08 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=gateway&p=54246  宇宙ベンチャー、アイスペース(東京)の月面着陸機「レジリエンス」が6日午前、月面への軟着陸を試みたが失敗した。着陸直前の減速が不十分のまま、月面に衝突した可能性が高いという。同社は2023年4月にも失敗しており、再挑戦も実らなかった。わが国では昨年1月の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「スリム」に続き2機目、また米国以外の民間で初の着陸となるか、注目されていた。

月面に着陸した場合のレジリエンス(左)と、搭載した小型探査車の想像図。この姿は実現しなかった(アイスペース提供)
月面に着陸した場合のレジリエンス(左)と、搭載した小型探査車の想像図。この姿は実現しなかった(アイスペース提供)

「ここで着陸しておきたかった」

会見でレジリエンスの着陸失敗を説明する袴田氏=6日、東京都千代田区
会見でレジリエンスの着陸失敗を説明する袴田氏=6日、東京都千代田区

 レジリエンスは同社の月面着陸計画「ハクトR」の2機目で、英語で回復力を意味する。6日午前に都内で会見した同社の袴田武史最高経営責任者(CEO)は「非常に残念。米国の2社が着陸させており、ここでわれわれも着陸しておきたかった。支援いただいてきた方々に非常に申し訳ないが、しっかり次につなげたい。月着陸機を飛ばせる企業は非常に限られており、なるべく早くキャッチアップし、世界をリードできる事業の進展を引き続き目指す」と話した。

 レジリエンスは1月15日、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから、スペースXの大型ロケット「ファルコン9」で打ち上げられた。前回に続き、地球や月の引力などを利用して燃料を節約できる「低エネルギー遷移軌道」を採用。打ち上げ後8日で着陸した1969年の米アポロ11号などに比べ長く、4カ月半あまりの行程で月を目指した。

 先月7日に月周回軌道に到達後、2回の主エンジン噴射で高度を下げ、同28日に月上空100キロを周回する円軌道に入った。今月6日午前3時13分、着陸作業を開始。計画では、時速5800キロから段階的に減速して高度を下げ、着陸の2分ほど前から補助エンジンを併用し姿勢を変更。最終降下を進め同4時17分、北半球中緯度にある「氷の海」に着陸するはずだった。ところが上空20キロを過ぎて主エンジンを噴射した後、機体からの信号が途絶。着陸予定時刻を過ぎても通信が確立できないことから、アイスペースは失敗と判断した。

測距が遅れ、一生懸命エンジンを噴いたが…

 同社は今後、原因究明を進める。直後の分析では、月面からの高度を測るセンサーが想定より遅く測距を始めたことと、減速が不十分だったことが判明した。機体は月面に衝突したとみられる。

 同社の氏家亮最高技術責任者(CTO)によると、推定高度192メートルまで降下して以降、機体からの信号が途絶した。「(測距センサーを)高度20キロ付近で起動後、10~3キロほどで測距が始まると想定していたが、実際には遅く、1.5~1キロほどで始まったようだ。その時点で降下が速すぎた。機体が速度を落とそうと一生懸命にエンジンを噴いたが、不十分だった。このようなシナリオと思われる。因果関係をしっかり詰めたい」と説明した。他に姿勢やエンジン、ソフトウェア、センサーの問題も考えられるという。

着陸予定の1分35秒前を示す中継画面。機体から送信されたデータを反映したものだが、この15秒前まではエンジンの噴射を示していた。その後このように、降下速度や高度も含め、データが途絶えたように見えた(アイスペース提供)
着陸予定の1分35秒前を示す中継画面。機体から送信されたデータを反映したものだが、この15秒前まではエンジンの噴射を示していた。その後このように、降下速度や高度も含め、データが途絶えたように見えた(アイスペース提供)

 ハクトRの1機目は2023年4月、日本初、かつ民間世界初が懸かった月面着陸に挑んだものの失敗した。原因は、降下中に高度の推定値と測定値の乖離(かいり)が拡大し、機体のソフトウェアが、ほぼ正確だった測定値の方を異常と判断し棄却したためだった。このため降下中に高度5キロ付近で燃料が切れ、機体が月面に激突した。事前に着陸地点を変更しており、航路上の地形の検討が甘かったことも要因という。

 この失敗を受け、レジリエンスでは着陸時の制御のソフトウェアを基本的に維持しつつ、飛行経路のシミュレーションを重ね、起こり得る事象を詳しく評価。それらの影響を受けても機体が対応できるよう調整していた。

 レジリエンスは、着陸用の足を展開した状態の高さが2.3メートル、幅2.6メートル、燃料を除く重さ340キロ。同社の欧州法人が開発した小型探査車のほか、月面用水電解装置やアニメ作品関連の合金プレートなど、国内外の企業や大学などの5つの機器や物品も搭載したが、失敗によりいずれも喪失した。月面の砂を採取し、所有権を米航空宇宙局(NASA)に譲渡する商取引も計画していた。

「『失敗』の言葉、ネガティブに感じられるが変えたい」

打ち上げ前、報道陣に公開されたレジリエンス=昨年9月、茨城県つくば市
打ち上げ前、報道陣に公開されたレジリエンス=昨年9月、茨城県つくば市

 アイスペースは先代の計画「ハクト」で米財団の月面探査レースに参加したが、2018年3月の期限までに実現できなかった(勝者なし)。今回に続くハクトRの3機目は、同社の米国法人と米航空宇宙局(NASA)との契約に基づく商業計画に参画し、機体開発を担当するもの。重さ1.73トンと大型化し、27年に打ち上げ、月の裏側の南極付近に着陸する。以降も着陸機の開発、運用を重ね、月面の資源利用、周辺の開発を通じた経済圏の構築を目指す。

 このように同社は現状では、着陸成功の実績を持たないまま、3機目以降を大型化する計画だ。会見で指摘を受けた袴田氏は「(3機目以降は)輸送量を増やし、事業として利益を獲得していくことを見立てているが、今回の原因のインパクトが見えていない中で、判断はこれからとなる。ただ基本的には(大型化の)実現にしっかり取り組んでいきたい」とした。

 無人機の月面軟着陸は1966年、旧ソ連の「ルナ9号」が初めて成功し、米国と中国、インドが続いた。日本はスリムが昨年1月、横転したものの、実質的な位置誤差10メートル以下の高精度着陸を達成。5つ目の着陸国となった。民間では昨年2月、米インテュイティブマシンズの「オデッセウス」が、やはり横転しながらも初めて成功。続いて今年3月、米ファイアフライエアロスペースの月面着陸機「ブルーゴースト」が成功した。同機はレジリエンスとロケットを相乗りして地球を出発したが、成否が分かれる形となった。その5日後にはオデッセウスの後継機「アテナ」が、またも横倒しで着陸している。

先月16日にレジリエンスが撮影した月。右には機体の一部が写り込んでいる(アイスペース提供)
先月16日にレジリエンスが撮影した月。右には機体の一部が写り込んでいる(アイスペース提供)

 月面で米企業が先行する中、レジリエンスは、日本企業が頭角を現すための正念場を逃した。原因の詳しい検証を待ちたいが、1機目に続き、着陸目前の測距に絡む失敗のようだ。袴田氏は昨年9月の会見で「最初のグループにいることは重要で、2年、3年と遅れないよう(レジリエンスで着陸を)実現したい」と話していたが、やや遠のいた観が否めない。残念であると同時に、まとまった重力があり、大気のない天体への軟着陸の難しさを物語ってもいる。

 袴田氏は今年1月には、筆者の質問に答える中で「失敗という言葉はネガティブに感じられるが、それを変えたいとの思いが強い。前回達成できなかったことを次はしっかり実現できるよう、行動していく。会社としてこれができる環境をしっかり作り、チームが活動できることが何よりも重要だ」と力説した。宇宙ビジネスの壮大な夢が詰まった計画。重ねた失敗を糧に、次こそ成功を勝ち取ってほしい。

レジリエンスの着陸失敗を明らかにしたアイスペースの会見。左から氏家氏、袴田氏、野崎順平最高財務責任者(CFO)。多くの企業が支援する中、次回こそ笑顔を期待したい=6日、東京都千代田区
レジリエンスの着陸失敗を明らかにしたアイスペースの会見。左から氏家氏、袴田氏、野崎順平最高財務責任者(CFO)。多くの企業が支援する中、次回こそ笑顔を期待したい=6日、東京都千代田区
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量子コンピューター ビジネスの時代へ https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/videonews/m240001010/ Fri, 06 Jun 2025 06:17:48 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=gateway&p=54238  量子が持つ性質を利用して、従来のコンピューターでは解くことが難しい複雑な計算を処理できるのが「量子コンピューター」です。そのアルゴリズム開発の最前線に立つスタートアップ企業を訪ねました。

再生時間:5分 制作年:2025年

出演・協力機関

大関真之(東北大学大学院情報科学研究科 教授、シグマアイ 代表取締役)
松下雄一郎(Quemix(キューミックス) 代表取締役)

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誰もが自分の医療データを持ち歩ける時代へ https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/videonews/m240001009/ Fri, 30 May 2025 06:22:40 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=gateway&p=54187  何かのきっかけで病院を受診する際には、さまざまな検査を受ける機会があります。患者は、これらのデータが自分のものでありながら、自由に触れたり利用することが難しいと感じることもあります。より開かれた医療を、情報工学によって実現する取り組みを紹介します。
【2022年度「STI for SDGs」アワード科学技術振興機構理事長賞受賞】

再生時間:5分 制作年:2025年

出演・協力機関

金太一(東京大学大学院医学系研究科医用情報工学 特任教授/脳神経外科)

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牧場発の未来エネルギー バイオガスとグリーンLPG https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/videonews/m240001008/ Fri, 23 May 2025 06:20:33 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=gateway&p=54130  持続可能なエネルギーが求められる中、 農業が盛んな地域からも環境や産業に根ざしたさまざまな技術が提案されています。畜産の廃棄物を使って未来のエネルギー開発を実践する、北海道鹿追町を取材しました。

再生時間:5分 制作年:2025年

出演・協力機関

城石賢一(鹿追町 農業振興課長)
柳美澤綾(古河電気工業株式会社 サステナブルテクノロジー研究所)

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北極の実像を究めよ わが国初の研究用砕氷船「みらい2」建造進む https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/clip/20250520_g01/ Tue, 20 May 2025 06:10:41 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=gateway&p=54099  北極域の研究に活用する、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の新たな観測船の建造が進んでいる。進水式で「みらい2」と正式に命名され、来年11月の引き渡しに向け整備が続く。わが国の研究船では初めて砕氷能力を持つことが最大の特徴で、地球規模の気候変動に深く関わる北極域の観測の大黒柱となる。冬季の北極海氷域の面積が衛星観測史上最小を記録したことが先月、明らかになるなど懸念が深まる中、北極の実像を究めようとするみらい2への期待が高まっている。

進水式を迎えた「みらい2」=今年3月、横浜市磯子区(JAMSTEC提供)
進水式を迎えた「みらい2」=今年3月、横浜市磯子区(JAMSTEC提供)

「データの空白を埋める」

 みらい2は全長128メートル、幅23メートル、船の大きさを表す国際総トン数1万3000トン、乗員97人となる計画。建造費は339億円。造船大手のジャパンマリンユナイテッド(横浜市)が2021年8月、横浜市磯子区の工場で建造を開始した。今年3月19日には進水式を挙行。天皇、皇后両陛下の長女、敬宮(としのみや)愛子さまが臨席され、船体を支えるロープ「支綱(しこう)」を進水のため斧(おの)で切断された。今後は内装工事や機器類の搭載などを進める。

 現行の海洋地球研究船「みらい」の後継。みらいは、わが国初の原子力船「むつ」を改装して1997年に竣工し、世界最大級の海洋観測船として北極海や太平洋、インド洋などの調査を担ってきた。優れた耐氷、航行性能を持つ一方、砕氷能力がないため海氷域に踏み込めなかった。これに対し、みらい2は厚さ1.2メートルの平坦な海氷を連続して砕きながら、3ノット(時速5.6キロ)で進める。ポーラークラス4と呼ばれる、十分な砕氷・耐氷性能を備える。

 JAMSTECの赤根英介・北極域研究船推進部長は「北極は日本から遠いイメージがあるかもしれないが、その変化は日本も含め地球全体に影響を及ぼしている。各国による変化予測にはばらつきが大きく、詳しい観測が必要だ。さまざまな課題の解決に貢献すべく、データの空白を埋める国際観測プロジェクトを、みらい2でリードしていく」と説明する。

砕氷しながら進む、みらい2の想像図(JAMSTEC提供)
砕氷しながら進む、みらい2の想像図(JAMSTEC提供)

 赤根氏によると、研究船としては珍しく、通常のディーゼル燃料に加えLNG(液化天然ガス)も使える二元燃料エンジンを採用。また、気象観測に用いるドップラーレーダー、魚群探知機、遠隔操縦無人潜水艇、ヘリコプター、研究者らを乗せて海氷に降ろす「マンライディングバスケット」などを搭載することで、「さまざまな海域における大気、気象、海洋、海氷のオールラウンドな観測研究機能を実装する」という。

 なお国立極地研究所の南極観測船「しらせ」は、海上自衛隊が砕氷艦として運用しているが、物資や人員の輸送が主。砕氷ができるのは研究船としては、みらい2がわが国初とみなされるという。

海氷の“床暖房”、北極海航路…研究課題山積

 南極大陸とは違い、北極域は海が広範囲を占め、北極点も海水が凍った海氷の上にある。今年1月にはJAMSTECと北海道大学、東京海洋大学などの研究グループが、太平洋から暖かい水が海氷の下に流れ込み、熱が顕著にたまり続けている現象が、報告例に乏しかった一部海域でも起きていることを明らかにした。この熱が床暖房のように海氷を暖め、解かす恐れが指摘されている。JAMSTECの菊地隆・北極環境変動総合研究センター長は「熱がどこから来て(海氷と)どう相互作用するのか、詳しく調べなければならない」と話す。

 極夜の前後に海氷ができたり解けたりする過程の理解も、課題となる。各地の森林火災で発生し大気に運ばれた煤(すす)が、北極海で氷の融解を加速したり、雲ができる核になったりする物理の解明、北極海の歴史の探究なども重要という。

 大西洋と太平洋を結ぶ北極海航路は、夏の一部の日に海氷が解けて開通し、エジプトのスエズ運河経由に比べ大幅に近道となる。通行の可否判断などのため、人工衛星の観測データが重要だ。ただ、衛星データによると通れないものの、現地の海氷の状況や船の等級によっては通れるケースがあるという。「海氷状況と衛星データの違いは航路にとって重要であり、調査する必要がある」(菊地氏)。

 みらい2の観測計画は、JAMSTECと極地研が連携して策定する。計画案では就航後、翌2027年に初の北極航海で北極点を目指す。32~33年の第5回「国際極年」を控え、毎年の計画案が具体化しつつあり、こうした研究課題に挑戦していく。船を長期に運用していくための人材育成も進める。

ヘリコプターから見た北極海の海氷=2008年9月(JAMSTEC提供)
ヘリコプターから見た北極海の海氷=2008年9月(JAMSTEC提供)

海氷域面積が最小、宇宙からも監視継続

 冬季の北極海氷域面積が3月20日、年間最大の1379万平方キロを記録した。これが衛星観測史上、最小だったことを先月18日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と極地研の研究グループが発表した。2012年から運用中の水循環変動観測衛星「しずく」など、国内外の衛星の47年間の観測データから判明した。

 JAXAの山川宏理事長は同日の会見で「北極海氷域面積の減少により、気象や海洋環境への影響が懸念される。観測データと研究解析の継続が非常に重要であることが、今回の成果から改めて認識できた。気候変動の監視にさらに貢献していきたい」と話した。

 しずくによる海氷域の解析では、搭載した高性能マイクロ波放射計「AMSR(アムサー)2」を活用している。地表や海面、大気などから放射される微弱な電磁波であるマイクロ波を捉える仕組みだ。JAXAと環境省、国立環境研究所は、その後継で観測波長帯を拡張した「AMSR3」を搭載した温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT(ゴーサット)-GW」を来月24日、H2Aロケット最終50号機で打ち上げる。

温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW」の想像図(JAXA提供)
温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW」の想像図(JAXA提供)

 昭和基地の活動や、映画にもなった観測隊の樺太犬などの影響で、現代の少なからぬ日本人にとって、北極より南極の印象が強いのではないか。観測船しらせを知っていても、みらいを知らなかった人も少なくないのでは。しかし、南極探検で知られる白瀬矗(のぶ、1861~1946)が当初は北極を目指すなど、日本人は歴史上、北方探検の熱い志を持ってきた。その志を、みらい2をはじめとする観測手段が引き継ぎ、船名の通りに人類の未来に貢献することを期待したい。

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重さ、長さ…はかることの“計り知れない”価値 メートル条約150年 https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/clip/20250519_g01/ Mon, 19 May 2025 06:01:16 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=gateway&p=54085  日常生活から先端技術に至るまで、単位を活用した正確な計量は欠かせない。その国際普及を目指した「メートル条約」が1875年に締結されて、20日で150周年を迎える。これに合わせ、計量の基準の普及や国際協力に取り組む産業技術総合研究所が、国内で長年、質量や長さの基準となっていた「日本国キログラム原器」と「日本国メートル原器」を報道陣に公開した。両者の同時公開は初めて。担当者は「計量の基準は人類の共通言語のようなもので、科学技術がもたらした一大成果だ」と強調する。

暮らしや産業、科学技術…支えてきた2つの「原器」

 「私たちの諸先輩は細心の注意を払って、これを守り続けてきました。現在の管理者として大変、誇りに思っています」

 茨城県つくば市にある産総研の一室。計量標準総合センター首席研究員の倉本直樹さんはこう語ると、鍵のかかる重厚な扉の奥へと、記者たちを招き入れてくれた。金色の銘板に「大日本帝國度量衡原器」と刻まれた歴史を感じる金庫が正面に置かれ、その内側は桐で覆われている。内部に置かれた二重のガラス容器の中に、直径、高さとも3.9センチの銀色の分銅がある。これがキログラム原器で、白金とイリジウムの合金1キロだ。

奥の金庫に厳重に保管されたキログラム原器について説明する倉本さん。金庫内の上段中央にあるのが、キログラム原器=12日、茨城県つくば市の産業技術総合研究所
奥の金庫に厳重に保管されたキログラム原器について説明する倉本さん。金庫内の上段中央にあるのが、キログラム原器=12日、茨城県つくば市の産業技術総合研究所

 桐を使うことで湿度を調整し、カビを抑制。金庫のある部屋は、湿度をほぼ0%に保っている。各国に配られたキログラム原器は約40年ごとに集められチェックを受けるが、日本のものは他国に比べ、質量の変化が極めて小さい。他国では、単にロッカーに入っている状態の例もあるのだとか。そう聞くと、冒頭の倉本さんの言葉が実感を帯びてくる。計量の基準を厳密に守ることは、暮らしや産業、科学技術のために欠かせない。キログラム原器の良好な保存状態は、近現代を通じ、日本人がこうした認識を強く持ってきたことを物語っているようだ。

 倉本さんは「キログラム原器は近代国家の道を歩み始めた日本が、欧米の学問や科学技術を導入して発展していくための、重要な知的基盤でもありました。アジアで極めて早くメートル条約に加盟したことからも、日本の戦略がうかがえます」と話す。

 メートル原器も別室で公開された。断面が「X」の形をした長さ1メートル2センチの棒状で、こちらも白金とイリジウムの合金。表面の窪みに目盛が刻まれており、その両端の間隔が1メートルだという。Xの形は曲がりにくく、かつ表面積が大きく温度に馴染みやすいため採用された。筆者を含む記者は一様に、両端の微小な目盛の撮影にてこずっていた。

メートル原器。「X」の形の断面は、曲がりにくく、表面積を大きくして温度に馴染みやすくするためという
メートル原器。「X」の形の断面は、曲がりにくく、表面積を大きくして温度に馴染みやすくするためという

 メートル原器、キログラム原器とも、既に定義の見直しにより基準ではなくなっており、それぞれ2012年と22年に国の重要文化財に指定されている。

定義は変遷を経て「普遍的な基準」採用

計量標準の必要性を説明する森岡さん
計量標準の必要性を説明する森岡さん

 「計量の升の大きさが地域によって違っていたら、地域の中では良くても、遠くの人と交流すると大きな問題になります。あるいは不作の年に升を小さくして年貢を徴収したら、その領主さんは(農民の味方として)名前が残るかもしれないが、良いことばかりではなかったでしょう。国や地域ごとにバラバラだった単位を統一して世界的に普及させようと、150年前にメートル条約が締結されたのです」。産総研で国際計量室長を務める森岡健浩さんは、計量標準の必要性の基本をこう説明する。

 質量や長さの定義は科学技術の進展につれて変わり、信頼性を高めてきた。18世紀末のフランスで、1キログラムは水1リットルの質量と定められ同国内で使われたが、メートル条約締結後の1889年、「国際キログラム原器」を製作した。これをフランスの国際度量衡局が管理し、キログラム原器の複製を日本など条約加盟国に配布した。

 1990年頃には、表面の汚れなどで国際キログラム原器の質量がわずかに変動した可能性が判明した。これを受け、人が作ったモノに依存しない普遍的な物理定数を定義に用いることになった。光が持つエネルギーの最小単位の「プランク定数」を基準とすることになり、産総研などによる定数の精密な測定を経て、2019年に採用された。こうしてキログラム原器は定義からは外れたが、現在も国内最高精度の分銅の一つとして活用されている。

(左)二重のガラス容器の中に、キログラム原器が収められている。(右)メートル原器の端。中央の窪みに微小な目盛が引かれている
(左)二重のガラス容器の中に、キログラム原器が収められている。(右)メートル原器の端。中央の窪みに微小な目盛が引かれている

測量への妨害、逮捕…苦難の歴史も

 一方、1メートルはまず1795年、「北極と赤道の間の子午線の弧の1000万分の1」と定められた。メートル条約締結を経て、1889年に「『国際メートル原器』の2本の目盛線の、温度零度の時の距離」と改訂。配布された複製の一つが、日本のメートル原器だ。その後は質量と同様、人が作ったモノに依存しないとの考えから、1960年に光の波長、具体的には「一定条件下のクリプトン86の波長の165万763.73倍」に変わった。さらに83年には「光が真空中を2億9979万2458分の1秒に進む距離」へと改められ、現在に至る。

18世紀末、メートル定義のための測量は「困難を極めた」と語る堀さん
18世紀末、メートル定義のための測量は「困難を極めた」と語る堀さん

 メートルの歴史で実に興味深いのは、1795年の定義だ。フランスで「どこでも使える単位系を」との機運が高まり、子午線を基準とすることになった。実際には北極と赤道の間ではなく、10度の緯度差がある2地点間の距離を測って9を乗じたそうだ。それでも、この2地点間は1100キロほどあった。「フランス革命(1789~99年)という背景もあり、測量は困難を極めました。政治的な疑いにより妨害を受けたり、逮捕されたりして6年かかったそうです」と、産総研計量標準総合センター研究グループ長の堀泰明さんが解説する。

 当時の人は一体どうして、こんな大がかりな測量の手間をかけたのだろう。メートル原器のような小さなものを採用できなかったのだろうか。堀さんに尋ねると、こんな答えが返ってきた。「非常にチャレンジングだったと思います。しかし人工物ではなく、地球のような自然物を基準とする考えがありました。また当時は測量技術が非常に発展し、特にフランスは注力していました。革命の高い志もあり、このようなプロジェクトが成功したのだと思います」。科学史のドラマチックな一幕だ。

計量基準の普及「科学技術の一大成果」

 メートル法は計測の基盤を整え、単位系の世界共通化を進めようと1875年5月20日、17カ国がパリで締結した。これにより、度量衡(長さ、体積、質量)の基準を国際的に普及するための加盟国の総会や、国際度量衡局が設立された。 日本は10年後の85年に条約に加盟。1959年、土地や建物の表記を除きメートル法を完全実施した。 同条約には現在、準加盟を含め101カ国が加盟する。

 メートル条約が成立した1875年には日本国内でも、地域ごとに違った長さや体積、質量の基準を統一しようと、長さの単位の「尺」や質量の「匁(もんめ)」を定めた度量衡取締条例が公布された。これが現在の計量法の前身。この年は偶然にも、世界と国内がそれぞれ、計測共通化の第一歩を踏み出す時となった。

「計量基準の普及は科学技術の一大成果」と話す臼田さん
「計量基準の普及は科学技術の一大成果」と話す臼田さん

 1971年までに国際度量衡総会が国際単位系(SI)として秒、メートル、キログラム、アンペア、ケルビン、モル、カンデラの7つの基本単位を起点とする単位系を確立。99年には、メートル条約締結の5月20日が世界計量記念日と定められた。条約150周年の今年は当日、パリで記念式典が開かれる。

 産総研計量標準総合センター長で、国際度量衡総会の下に設置された委員会の幹事を務める臼田孝さんは「計量の基準は時代や文化、国を超えて意思疎通する共通言語のようなもの。『必ず正確だ』という信頼があって、人々に受け入れられてきたことは、科学技術の一大成果。メートル条約は、最も成功した国際条約の一つだろう」と語る。

 私たちは日々、通勤や通学が「駅徒歩何分」と気にしたり、お菓子の容量が減って“ステルス値上げ”に落胆したり、ガソリンや米の価格の高騰を嘆いたり…暮らしは単位や計量に満ちている。条約150周年の機会に、身近な測る(量る、計る)作業から暮らしや社会を見つめ直すと、面白そうだ。

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スマートフォンで失明を減らす https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/videonews/m240001007/ Fri, 16 May 2025 05:17:17 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=gateway&p=54082  日々の暮らしにとって、視力の大切さは言うまでもありません。適切な眼科診断が行えない国や地域の課題に向き合った日本のスタートアップ企業が、どこでも受けられる眼科診療の実現に挑戦しています。
【2023年度「STI for SDGs」アワード文部科学大臣賞受賞】

再生時間:5分 制作年:2025年

出演・協力機関

清水映輔(OUI Inc. 代表取締役/医療法人慶眼会 横浜けいあい眼科和田町院 理事長)
中山慎太郎(OUI Inc. 最高執行責任者)

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研究倫理の知識を得て、飛躍する生徒たち 学校現場の実例から https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/clip/20250513_g01/ Tue, 13 May 2025 06:44:28 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=gateway&p=54046  学校現場で探究学習やSTEAM(科学・技術・工学・芸術・数学)教育の取り組みが広まる中、生徒たちが自ら研究を進める場面も増えてきた。研究倫理の知識・配慮は必須だが、生徒への指導は現場の教員が一手に担うことも多く、学校の対応には温度差があるのが実情だ。研究倫理の啓発に取り組む一般財団法人公正研究推進協会(APRIN)の教材や、教員と研究者から知識を得て生徒が飛躍した実例から浸透へのカギを探った。

大人が予期する以上に高校生は伸びる

 学校教育の中で推進している「探究」とは、実社会や実生活の中から問いを見いだし、自ら課題を設定して情報収集・整理分析を行い発表するまでの学習活動全体を指す。学習指導要領では「総合的な探究の時間」をはじめ探究に取り組む科目を定め、子どもたちは探究の過程を通して課題を解決するために必要な基本的な資質・能力を育成する。

 学習活動の成果を発表し評価を得る機会となるコンテストも盛んに開催されている。発表内容は学校内の教育活動の範囲を超え、学術的価値や社会的インパクトの大きな研究活動と見なされるものも多い。学校関係者でなくても、インターネットの情報やニュース記事などで高校生の優れた研究成果に舌を巻いたこともあるだろう。

 APRINの中等教育系分科会は、研究倫理の知識を持たずに十分な対応や配慮をしなくても研究を進めることができてしまう現状に警鐘を鳴らし、生徒と指導教員に向けた教材を作成・公開している。研究や学習の機会を制限するのではなく、研究成果を発表する段階で研究不正とされてしまわないよう、国際基準により厳格な倫理的配慮を求められても生徒たちが臆することなく研究に取り組めるようにすることが目的だ。

 同分科会の長を務める東京工業大学(現・東京科学大学)名誉教授の岩本光正さんは、「高校生がどのレベルまで研究できるかを分かってほしい。国際学生科学技術フェア(ISEF)などの代表的なコンテストの発表内容は大学院レベルまで達している。大人が予期する以上に高校生は伸びる」と語る。

一般財団法人公正研究推進協会(APRIN)がオンラインで配信する中等教育向け教材と、紙冊子でも配布しているハンドブック
一般財団法人公正研究推進協会(APRIN)がオンラインで配信する中等教育向け教材と、紙冊子でも配布しているハンドブック

 では、実際に研究を進める生徒はどのように倫理上の課題に取り組み、教員などのサポートを得ているのだろうか。日本科学振興協会(JAAS)が主催するイノベーションユースに参加した2名のケースを紹介しよう。

幼少期の体験から抱いた問いへの答えを得る

 イノベーションユースは、10代の若者がメンターの支援を受けて自らの研究テーマや社会課題を解決するアイデアを実現し発表する、育成型のプロジェクトだ。徳島県立城ノ内中等教育学校で学んだ齋藤遥さんは、2023年度のイノベーションユース season2に参加した。

 もともとは総合的な探究の時間の学習として、教科書などのデザインが学習意欲にどう影響するのかに着目し、研究をスタートした。文字のフォントやサイズ、色の濃さや行間などの要素の変化により学習意欲を高める効果を調査。得られた結果から意欲を向上させるデザインモデルを作成し有効性を検証した。

日本教育工学会2024年秋季全国大会で、オンラインでのポスター発表をする齋藤遥さん(齋藤さん提供)
日本教育工学会2024年秋季全国大会で、オンラインでのポスター発表をする齋藤遥さん(齋藤さん提供)

 齋藤さんが研究テーマを決めた原点には、母親が市販の問題集のページを拡大コピーしたことで「簡単そうに見えて勉強する気になった」幼少期の体験があった。インターネット上の教育ブログなどでも似た経験を語る人がいると知り、研究対象にしようと考えた。JAASの担当者としてイノベーションユース実施に携わる九州大学准教授の大賀哲さんは、齋藤さんたち生徒の取り組み方を「自分の中に原体験があり、そこで抱いた問いに研究を通じて答えを得ていく」と捉える。

きっかけを得て知識を吸収し、研究に取り入れる

 齋藤さんは、研究に必要な倫理的配慮について「研究に限らず日常において倫理的に気を付けた方が良いことと、研究を進める上で留意しなければならないことの2つの面で捉えている」と言う。前者は研究に取り組む前からディベート活動などを通じて身に着けていた。

 研究では色覚特性を持つ人の見え方も調査したが、アンケートを作成する際に「色覚障害」といった身体上の優劣をつけるような表現は避けた。ただ、色覚特性と単純に言葉を置き換えるだけではその言葉を知らない被験者には伝わりづらくなってしまう。このため「何か見えにくい色や判別しにくい色がある人は色覚特性ありとなります」という注釈を加える工夫をしたと言う。

 研究上の観点について、同校で3年間、齋藤さんの担任を務めた和泉太輔さんは、英国の大学院留学時の経験に照らして日本の教育現場では研究倫理の意識づけが十分ではないことを問題と捉えていた。盗作をしてはいけない、引用はルールを守って行う、アンケート調査をする際の留意点など、折に触れクラス全体に注意喚起を促していた。

 和泉さんが「海外ではこういうのが普通だよ」と被験者と交わす同意書を示すと、齋藤さんは即座に自分の研究にも取り入れた。当初から「できたら学会にも出したい」と考えていた齋藤さんは、和泉さんの教えだけでなく、イノベーションユースのメンターらのアドバイスや発表会で他の生徒が受けるコメントなどからも素直に知識を吸収した。6年生(高校3年に相当)の時には日本教育工学会の2024秋季全国大会で研究成果をオンライン発表。「自分はきっかけを与えただけ」と和泉さんは振り返る。

研究倫理の指導やアドバイスも受け、調査計画を練った(日本教育工学会2024年秋季全国大会発表資料より、齋藤さん提供)
研究倫理の指導やアドバイスも受け、調査計画を練った(日本教育工学会2024年秋季全国大会発表資料より、齋藤さん提供)

理想に近づくために子ども食堂を研究

 同じくイノベーションユース season2に長崎県立諫早高等学校から参加した川井和さんは、同校の課外活動「パクパクプロジェクト」への参加をきっかけに、子ども食堂をテーマにした研究を行った。もともと貧困問題に関心を持っていた川井さんは、先輩からプロジェクトに誘われて通うようになったと言う。しかし実際に参加してみると、貧困世帯など子ども食堂を必要とする人々が参加していないことに気づき、「どうしたら理想に近づけられるか」と研究を始めた。

 子ども食堂参加者や諫早市民へのアンケート調査、大規模な子ども食堂の企画・開催、他の子ども食堂やフードバンクの調査などから、子ども食堂の意義は貧困世帯を食事・食料の形で直接支援することにあるのではないという結論に行き着いた。「地域にコミュニケーションの場を作り社会で包括的に関わることが、結果として貧困支援になる」

2024年1月に九州大学主催のシンポジウム「共生をイノベーションする—まちづくりとEBPM」で自身の活動を発表する川井和さん(大賀さん、川井さん提供)
2024年1月に九州大学主催のシンポジウム「共生をイノベーションする—まちづくりとEBPM」で自身の活動を発表する川井和さん(大賀さん、川井さん提供)

 同校教員で「総合的な探究の時間」のプログラム設計を担う後田康蔵さんは、研究計画を立てるところから発表のマナーや引用・参考文献の引き方に至るまで、校内の講座で生徒たちに指導している。川井さんのメンターを務めたときのことを「貧困にかかわる研究であることから、調査はプライバシーに十分に配慮する必要があった。アンケートの作りなどはかなり一緒に考えた。また、アンケート標本に偏りがないように、パクパクプロジェクトのイベントに参加しない人たちにも調査対象を広げるなど試行錯誤した」と研究倫理を浸透させるための過程を振り返る。

研究を通じて自己実現をし、社会を変える

 川井さんの研究は、子ども食堂の実践としてイベント自体の効果を高め盛り上げるという側面と、客観的な調査研究により貧困家庭への効果的な支援のあり方を導き出す側面の両面のバランスをとるところが勘所だった。

 活動を多くの人に知ってもらい持続的な活動にするために、同じクラスの生徒らにも輪を広げ、諫早市内の全ての高校にポスターを張って仲間を募集。2024年1月に九州大学アジア・オセアニア研究教育機構が主催したシンポジウムでも積極的に発表した。

 長崎県議会の議員の面々にお金や食材が集まるシステムを提案した際には、議員らは「負担が増えてしまうから、県としては難しい」といった後ろ向きな発言に終始した。その時は落胆したが、後に川井さんが登壇した公開ワークショップに、最もネガティブな発言をした議員が姿を見せた。子ども食堂を手伝う議員も現れたそうだ。「少しでも伝わっていたんだ。繋がってはいるのかな」

2024年4月に諫早高校で開催した「パクパクプロジェクト」参加者に提供する食事を用意する(川井さん提供)
2024年4月に諫早高校で開催した「パクパクプロジェクト」参加者に提供する食事を用意する(川井さん提供)

 川井さんは昨年度末に卒業し、パクパクプロジェクトは後輩たちに引き継がれている。後田さんは、寄付で成り立つ子ども食堂は比較的リスクが少ない事業と評する。「リスクがあってもより持続可能で効果的な活動をしたい」という川井さんの言葉を印象的に覚えているそうだ。

 大賀さんは「生徒たちの取り組みには、純粋に探究心から始まる研究もあれば研究を通じて社会問題にアプローチするものもある。大学中心の研究者の世界では、後者は必ずしも高く評価されないこともあるが、中高生の間は研究を通じて自己実現をし、社会に働きかけていくような成長のかたちがあって良い」と語る。

 研究でイノベーションを起こす可能性も、社会問題の解決に向け新しい取り組みを始める可能性も、子どもたちの将来は多方面に開かれている。学校での学びを通じて得られた研究倫理の知識が子どもたちの飛躍を支える礎となる。

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光で開くSociety 5.0 IOWN構想と光電融合 https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/videonews/m240001006/ Fri, 09 May 2025 01:47:24 +0000 https://scienceportal.jst.go.jp/?post_type=gateway&p=54002  現実世界と情報技術が融合した社会「Society(ソサエティー)5.0」の実現に向け、情報通信の未来を目指したさまざまな技術が登場しています。そうした中、光通信技術を使って次世代通信のインフラ構築を目指すのが、2019年から始動した巨大民間プロジェクト「IOWN構想」です。

再生時間:5分 制作年:2025年

出演・協力機関

大石哲矢(NTT IOWN総合イノベーションセンタ 副センタ長)
日本電信電話株式会社

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