レビュー

編集だよりー 2006年12月22日編集だより

2006.12.22

小岩井忠道

 有馬記念の枠順が各紙の朝刊に載っている。2日前のTBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」でゲストの気象予報士、森田正光氏が「ディープインパクトは勝てない」という論をぶっていた。

 これを信じて大負けした聴取者からクレームが来たらどうしよう。そう思ったかどうか知らないが、森本氏がブレーキをかけても、森田氏はまったく動じない。

 動物は同じ種でも寒いところに住む種ほど大型になる。体積(体重)は長さ(身長)の3乗に比例するが、表面積は2乗しか増えないので、体温を維持するには大型になった方が有利だからだ。冬のレースである有馬記念は、大きな馬の方が有利。実際に、冬の有馬記念と初夏の宝塚記念を比べると、冬の有馬記念の方の優勝馬の平均体重の方が重い。ディープインパクトの体重は、出走馬の中ではそれほど重くない。

 概略こんな“論理構成”だったと思う。

 さて、昨夜、自宅に段ボール箱が届いていた。村上征勝・同志社大学文化情報学部長に頼んで書店から送ってもらった「林知己夫著作集(全15巻)」である。

 14、15の両日、京都で開かれた「人文科学とコンピュータシンポジウム」(15日編集だより、16日編集だより参照)の会場に、この本が並んでいた。たまたま村上氏にあいさつして、統計数理研究所での研究生活が長く、所長を務めた林知己夫氏の弟子に当たると知る。この著作集を刊行するのに、大げさなことを嫌う林氏をくどく役割を担ったということだった。

 林氏には、野ウサギの生息数調査にはじまり、日本人の国民性調査、原子力に対する意識調査(10月17日編集だより参照)から、氏が晩年、関心を持っていたクオリティー・オブ・ライフに関する研究対象まで、氏の広範な業績に比べればほんの一部にしか過ぎないが、話を伺うたびに感服した思い出がある。

 日本人の国民性調査など、いまでも何かで引用したくなる大変な業績だと思うが、いつの間にか抜き刷りが所在不明になってしまっていた。これから、時間をかけて、著作集を読ませてもらうつもりだ。

 森田正光氏の有馬記念予想の話から林知己夫氏に、と知ったら、氏もあの世で苦笑するかもしれない。

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